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【CATARACT】で申し込みました
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2012,04,01, Sunday
クロノ 鮫島 北乃ゆうひ
エイプリルフール。
それが何であるかはすでにクロノは知っている。
だが、そこにあの執事が絡んでくると話が変わる。
しかし、その執事の様子が……?
エイプリルフール。あるいは四月馬鹿。
その言葉を小さく舌の上に乗せて、噛み締めるように、クロノ・ハラオウンは吐息をもらした。
黒髪黒目という日本人らしい特徴を持った少年であるが、その名の通り彼は日本人ではない。
とはいえ、今は日本で暮らしているし、日本語も問題ないので、日本人でないことなど些細なことである。
基本的に真面目で、悪く言えば堅物とも言えるこの少年は、少し悩んでいた。いやかなり悩んでいた。
別にエイプリルフールの習慣にとやかく言うつもりはない。
企業も個人も、今日のためにわざわざ用意しているネタを披露しているし、それらはどれも手が込んでいて面白い。
仲間同士での他愛も無い嘘も良いだろう。それは、今日だからこそ出来る身内の楽しみのひとつでもあるのだから。
だからまぁ――クロノとしても別にささやかな嘘で騙されたりしたところで、怒るつもりはない。
空を見上げる。
まばらに散る白い雲と、突き抜けるような蒼穹と、爽やかなそよ風。陽気はすでに春の様相を呈しており、日の光はポカポカと温かい。
これといった事件もなく、世はなべてこともなし。休日としては申し分ない。
――だというのに、クロノは気が重かった。
これはもう予感を超えた直感だ。来る。絶対にヤツが来る。
これまでのパターンから察するに、確実に来る。来ないワケがない。
既に、クロノのケータイには、同志からのメールも届いていた。
【遭遇したら諦めよう】
と。
どうしようもなかった。
メールの向こうから、諦めの境地に達した空気がヒシヒシと感じる。
遭遇したら――などと書いてあるが、どうせ遭遇するのだから諦めようという、そういう空気だ。
ひどい泣き寝入りな気がするが、まぁ自分も似たような心境なので、とやかくは言えない。
少し強い風が吹く。
「……そろそろ、かな?」
風に髪を揺されながら、改めて空を見上げて呟く。
その声は風にながら、天に溶け行く。
あまりにも小さな声に、誰も気にもとめないほどだったのに、それに反応する声があった。
「お待たせしました」
「待ってない帰れ」
即答。
声のした方に見向きもせずに、クロノは告げた。
「はっはっは。つれないコトを言いますなクロノ様」
深く深く息を吐き出して、クロノはゆっくりと声の主へと身体を向ける。
そこにいるのは、バニングス家に仕える執事。鮫島。
普段は優秀で有能で、執事として申し分ない人物ながら、一度悪ふざけを始めると収拾など考えず風呂敷を広げ続け、飽きると風呂敷を閉じることなく帰っていく。
その悪ふざけのターゲットになることが多いのが、クロノであり、先程のメールの送り主でもある高町恭也の両名だ。
関わりたくないが、神出鬼没なこの執事と、だいたい関わってしまう。
その遭遇のタイミングが、クリスマスやらバレンタインやらである為、今日もまた警戒をしていたのであるが。
「クロノ様。エイプリルフールというものをご存知ですか」
「知ってます。知っているからこそ、あなたと会いたくなかった」
「知っていながら会いたくなかった、と。なるほど、クロノ様。本日は嘘によるツンデレ全開なのですね。ありがとうございます」
「うわ面倒くさい殴りたい」
「あっはっは。ツンツンしておりますなー!」
この執事、どうしてくれようか。
根本的にどうにもならないのだが、それでも色々と乱暴な衝動が抑えられそうにない。
「乱暴な衝動とは――出来れば、女性の方が……」
「人の心を読まないで下さいッ! あと、そういう意味じゃありませんッ!」
ツッコミを入れてから、頭を抱える。
思うツボになっている気がしてならなかった。
「ところでクロノ様。今日はこのような快晴ながら、雪が降るらしいですよ」
「嘘ですよね」
「はい。嘘でございます」
他愛もない――というか、もはや騙す気すらない嘘など、何の意味があるのだろうか。
こっそりと嘆息して顔を上げると、ふと周囲が暗くなっていることに気が付いた。
「鮫島さん、今度は何をしたんです?」
「い、いえ……私はなにも……」
彼も困惑した様子で周囲を見渡している。
「なんだ……?」
訝しみながら、空を見上げると、分厚い雲が集まってきていた。気温もどんどん下がってきている。
「急に天気が変わったな」
「なにやら不自然な感じが致しますが……クロノ様、これは……」
「いや。魔力は感じない。魔法ではないと思うんだが」
だからこそ、不気味なのだが。
冷えた空気に、クロノがぶるりと身体を震わせる。
春の陽気にあわせた服装なのだったのだが、今はこの上に一、二枚上着が欲しくなっていた。
「申し訳程度ですがこちらをどうぞ。急に冬の天気になりましたからな」
どこからともなく執事の取り出したカイロをありがたく受け取る。
「雪だ」
呟く声に、白い息が混じった。かなり冷え込んできているようだ。
「……嘘から出た誠、というやつですな……」
クロノの言葉にうなずく鮫島も、かなり戸惑っているようであるが。
「まぁそういうコトもあるか」
天気というものは、その世界の気まぐれの産物なのだ。
コントロールしている世界もあるが、地球にはそんな技術はない。
ならば、星の気まぐれとでも思っていた方が気楽というものである。
「個人的に出鼻を挫かれてしまった気がしますな」
はっはっはと横を歩く執事は笑う。
「あの何でついてきてるんですか?」
「いえ、特に理由は」
雪が降ってきたこともあり、クロノは散歩を途中で切り上げて自宅へと戻っている途中だ。
天気も悪くなったことでこの執事もまた帰るのかと思ったのだが、そんなことはなかった。
「ところでクロノ様。知っておりますかな? 今日はもしかしたら隕石が丁度良い角度で突入してくるかもしれない、と」
「嘘ですよね」
「はい。嘘でございます」
素直にうなずく執事に、クロノは眉を顰める。
普段の執事であれば、もう少しこちらを振り回すようなネタをしてきそうだが、今日はいまいちキレが悪い。いや、切れ味が良い嘘など勘弁してもらいたくはあるが。
「……!」
と、ふと目に入った火の玉に思わずクロノはその場から飛び退いた。
「どうしましたクロノさ……」
直後、その火の玉が鮫島に直撃し、地面を小さなクレーターを作り出す。
その中心で黒こげになっていた鮫島だったが、すぐに何事もなかったかのように立ち上がる。その姿はだいぶボロボロであるが。
「死ぬかと思いました」
「むしろ何で生きているんですか?」
まぁこの程度で鮫島が死ぬとは思っていなかったので、クロノは何もせずその場を離れただけなのだが。
「ところで今のは一体……?」
首を傾げる鮫島に、クロノ自身も半信半疑の答えを返した。
「隕石なんじゃないかと」
「…………」
珍しく、鮫島が沈黙する。
やがて口を開くと、
「嘘から出た誠、というやつなのでしょうか……」
首を傾げながら、そう呟いた。
それに、クロノは何と答えて良いかわからなかった。
「それで、何でついてくるんですか?」
「いえ深い意味は特に」
クロノが再び帰路に着くと、相も変わらず鮫島も後をついてくる。
鮫島自身は何かいたずらをしたいのかもしれないが、今日に限ってはどうにもそのチャンスを逃してしまっているようだ。
その逃がしてしまう理由を思うと、クロノは少々薄ら寒いものを感じている。
(先程から、嘘をつこうとして失敗してるんだよな)
二連続。それを偶然と片付けるべきか、必然と片付けるべきか。運命の女神のいたずら辺りがふさわしい気もするが。
「む、クロノ様」
「なんですか?」
「あなたを狙う刺客が!」
突然声を上げる鮫島に対し、クロノは冷めた様子で周囲を見渡す。
当然、何もいないし、気配もない。
「嘘ですか」
「はい。嘘でござ……」
「そこの執事……何で気が付いた?」
鮫島の言葉を遮って、何も無い空間に魔法陣が出来たと思うと黒ずくめの男が姿を見せた。
嘘から出た誠。怪我の功名。馬鹿に出来ない四月馬鹿。
「まぁ、何でもいいか」
「なに?」
クロノが思わず漏らした男は眉を顰める。
「ああ。気にしないでくれ。君のコトを三流だと思っただけのコトだ」
「貴様……ッ!」
気配の消し方も魔力の消し方も完璧だった。
鮫島が言った他愛のない嘘を真に受けて姿を見せたのが運の尽きといえよう。
一流なら、すぐに姿を見せずに様子を見ただろう。そして様子を見ていれば鮫島のネタ晴らしに気付けたはずだったのに。
執事に見抜かれたことでプライドが傷ついたののだろう。それで苛立っていたところへ、クロノの言葉だ。どうやら相当、頭に来たらしい。
だが、クロノからすれば、ますます三流だと言わざるをえない。
「暗殺者を気取るなら、ここで冷静さを失ったらダメだと思うんだが?」
踊りかかってくる刺客を見据え、クロノは一歩踏み込んだ。
「…………あの、クロノ様」
「鮫島さん。今日はもう喋らない方が良い気がしますよ?」
「…………………」
二度あることは三度ある。あるいは三度目の正直か。
刺客を拘束し、エイミィへ連絡し終えたあとで、声を掛けてきた鮫島にクロノは、思わず告げた。
「色々と用意はしておいたのですが……」
どこか寂しそうである。
「前フリが成功してないんですから、出番もないんじゃないですか?」
「そうでございますね……」
どうにも元気が無い。
「何が悪かったのでしょうか?」
「いたずらそのものが悪いと言えば悪い気がしますが――それでもまぁ強いて言えば、今日の鮫島さんの運勢が、ではないかと」
「運勢ですか」
「ええ」
「運勢ならば仕方がないですね」
コーケコッコー!
「…………」
突然響いたニワトリの鳴き声に、クロノはビクリとするが、執事は至って冷静に懐から懐中時計を取り出した。
「そろそろお嬢様のお茶の時間でございますな」
とてもしょんぼりとした様子で、鮫島が呟く。
「このような不本意なタイムアップは初めてでございます」
「でしょうね」
「…………」
しばらくは肩を落とした様子だったが、そこはプロの執事だ。
大きく息を吐いた後、シャキッと姿勢を但し、恭しくクロノへと頭を下げた。
「それでは失礼致しますクロノ様。本日はご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
「まるで普段は迷惑掛けてないとでも言うような言い方ですが――まぁそういう日もあるでしょうから、お気になさらず」
「ところでクロノ様……帰る前に実は一つ言っておきたいコトがございまして」
「なんですか?」
「――嘘、でございます」
「……この期に及んで何が【嘘】なんですか?」
クロノの返答に、鮫島も困った顔をして答える。
「何かがそうであればよかったなぁ……と」
そうして鮫島は改めて頭を下げると、とても哀しそうに去っていくのだった。
隕石辺りがパカりと開いて【嘘ぴょ~ん】などと旗が出てくれば救いもありそうなものであるが、それもなかったのだから、今回は本気で鮫島は本領を発揮出来なかったのだろう。
「されたらされたで嫌だったけど」
だからといってあそこまで気落ちされると、何だか申し訳なくなってしまうのは、自分の人の良さ故なのだろうか。
「あ、あの」
「なんだ?」
ストラグルバインドをした上で、鮫島が用意してくれた簀巻きセットで拘束し、転がしておいた刺客が声を掛けてくる。
「じ、実は俺、あの執事の用意した偽の殺し屋で――」
「だとしたらあの人は簀巻きセットなんて用意しませんよ。タチの悪いいたずらをする人ではありますが、一線を越えるいたずらはしない人ですから」
「そこはほら手違いとかだって……」
「まぁそれならそれでも僕は構わないんだが」
「え?」
「あの人の知り合いなら、多少は無茶しても平気なんでしょう?」
「え、えーっと……」
「騒いだら騒いだで厄介ではあるが、騒ぎもなく何らかのオチも無い――というのはどうにも張り合いがなくて落ち着かなかったところでもある」
「何を言って……」
「こういうのを何と言ったか……ああ、そうだ。爆破オチだ。物足りないと思ってしまう時点で僕も相当毒されてしまっているのかもしれないが」
「ちょ……なんでデバイスをこちらに……ッ!?」
「ブレイズカノン!」
男の言葉など無視して、クロノが魔法を解き放つ。
青白い閃光と爆音は彼を悲鳴ごと飲み込んだ。
「無意味な暴力って虚しいな」
宙を舞う刺客を見ながらクロノが呟く。
「なら……やるなよ……」
地面に落ち、ぐったりとしながら、刺客が呻いたが、それもまた、虚しく空に溶ける。
クロノはデバイスを仕舞い、空を見上げた。
気が付くと、雲は晴れ、気温も元に戻っている。
「嘘をつくって、案外難しいものなんだなぁ」
再び顔を出した太陽に目を細めながら、クロノは思わずそう漏らさずにはいられなかった。
【April not Fool - cloused.】
≪ 続きを隠す
エイプリルフール。
それが何であるかはすでにクロノは知っている。
だが、そこにあの執事が絡んでくると話が変わる。
しかし、その執事の様子が……?
エイプリルフール。あるいは四月馬鹿。
その言葉を小さく舌の上に乗せて、噛み締めるように、クロノ・ハラオウンは吐息をもらした。
黒髪黒目という日本人らしい特徴を持った少年であるが、その名の通り彼は日本人ではない。
とはいえ、今は日本で暮らしているし、日本語も問題ないので、日本人でないことなど些細なことである。
基本的に真面目で、悪く言えば堅物とも言えるこの少年は、少し悩んでいた。いやかなり悩んでいた。
別にエイプリルフールの習慣にとやかく言うつもりはない。
企業も個人も、今日のためにわざわざ用意しているネタを披露しているし、それらはどれも手が込んでいて面白い。
仲間同士での他愛も無い嘘も良いだろう。それは、今日だからこそ出来る身内の楽しみのひとつでもあるのだから。
だからまぁ――クロノとしても別にささやかな嘘で騙されたりしたところで、怒るつもりはない。
空を見上げる。
まばらに散る白い雲と、突き抜けるような蒼穹と、爽やかなそよ風。陽気はすでに春の様相を呈しており、日の光はポカポカと温かい。
これといった事件もなく、世はなべてこともなし。休日としては申し分ない。
――だというのに、クロノは気が重かった。
これはもう予感を超えた直感だ。来る。絶対にヤツが来る。
これまでのパターンから察するに、確実に来る。来ないワケがない。
既に、クロノのケータイには、同志からのメールも届いていた。
【遭遇したら諦めよう】
と。
どうしようもなかった。
メールの向こうから、諦めの境地に達した空気がヒシヒシと感じる。
遭遇したら――などと書いてあるが、どうせ遭遇するのだから諦めようという、そういう空気だ。
ひどい泣き寝入りな気がするが、まぁ自分も似たような心境なので、とやかくは言えない。
少し強い風が吹く。
「……そろそろ、かな?」
風に髪を揺されながら、改めて空を見上げて呟く。
その声は風にながら、天に溶け行く。
あまりにも小さな声に、誰も気にもとめないほどだったのに、それに反応する声があった。
「お待たせしました」
「待ってない帰れ」
即答。
声のした方に見向きもせずに、クロノは告げた。
「はっはっは。つれないコトを言いますなクロノ様」
深く深く息を吐き出して、クロノはゆっくりと声の主へと身体を向ける。
そこにいるのは、バニングス家に仕える執事。鮫島。
普段は優秀で有能で、執事として申し分ない人物ながら、一度悪ふざけを始めると収拾など考えず風呂敷を広げ続け、飽きると風呂敷を閉じることなく帰っていく。
その悪ふざけのターゲットになることが多いのが、クロノであり、先程のメールの送り主でもある高町恭也の両名だ。
関わりたくないが、神出鬼没なこの執事と、だいたい関わってしまう。
その遭遇のタイミングが、クリスマスやらバレンタインやらである為、今日もまた警戒をしていたのであるが。
「クロノ様。エイプリルフールというものをご存知ですか」
「知ってます。知っているからこそ、あなたと会いたくなかった」
「知っていながら会いたくなかった、と。なるほど、クロノ様。本日は嘘によるツンデレ全開なのですね。ありがとうございます」
「うわ面倒くさい殴りたい」
「あっはっは。ツンツンしておりますなー!」
この執事、どうしてくれようか。
根本的にどうにもならないのだが、それでも色々と乱暴な衝動が抑えられそうにない。
「乱暴な衝動とは――出来れば、女性の方が……」
「人の心を読まないで下さいッ! あと、そういう意味じゃありませんッ!」
ツッコミを入れてから、頭を抱える。
思うツボになっている気がしてならなかった。
「ところでクロノ様。今日はこのような快晴ながら、雪が降るらしいですよ」
「嘘ですよね」
「はい。嘘でございます」
他愛もない――というか、もはや騙す気すらない嘘など、何の意味があるのだろうか。
こっそりと嘆息して顔を上げると、ふと周囲が暗くなっていることに気が付いた。
「鮫島さん、今度は何をしたんです?」
「い、いえ……私はなにも……」
彼も困惑した様子で周囲を見渡している。
「なんだ……?」
訝しみながら、空を見上げると、分厚い雲が集まってきていた。気温もどんどん下がってきている。
「急に天気が変わったな」
「なにやら不自然な感じが致しますが……クロノ様、これは……」
「いや。魔力は感じない。魔法ではないと思うんだが」
だからこそ、不気味なのだが。
冷えた空気に、クロノがぶるりと身体を震わせる。
春の陽気にあわせた服装なのだったのだが、今はこの上に一、二枚上着が欲しくなっていた。
「申し訳程度ですがこちらをどうぞ。急に冬の天気になりましたからな」
どこからともなく執事の取り出したカイロをありがたく受け取る。
「雪だ」
呟く声に、白い息が混じった。かなり冷え込んできているようだ。
「……嘘から出た誠、というやつですな……」
クロノの言葉にうなずく鮫島も、かなり戸惑っているようであるが。
「まぁそういうコトもあるか」
天気というものは、その世界の気まぐれの産物なのだ。
コントロールしている世界もあるが、地球にはそんな技術はない。
ならば、星の気まぐれとでも思っていた方が気楽というものである。
「個人的に出鼻を挫かれてしまった気がしますな」
はっはっはと横を歩く執事は笑う。
「あの何でついてきてるんですか?」
「いえ、特に理由は」
雪が降ってきたこともあり、クロノは散歩を途中で切り上げて自宅へと戻っている途中だ。
天気も悪くなったことでこの執事もまた帰るのかと思ったのだが、そんなことはなかった。
「ところでクロノ様。知っておりますかな? 今日はもしかしたら隕石が丁度良い角度で突入してくるかもしれない、と」
「嘘ですよね」
「はい。嘘でございます」
素直にうなずく執事に、クロノは眉を顰める。
普段の執事であれば、もう少しこちらを振り回すようなネタをしてきそうだが、今日はいまいちキレが悪い。いや、切れ味が良い嘘など勘弁してもらいたくはあるが。
「……!」
と、ふと目に入った火の玉に思わずクロノはその場から飛び退いた。
「どうしましたクロノさ……」
直後、その火の玉が鮫島に直撃し、地面を小さなクレーターを作り出す。
その中心で黒こげになっていた鮫島だったが、すぐに何事もなかったかのように立ち上がる。その姿はだいぶボロボロであるが。
「死ぬかと思いました」
「むしろ何で生きているんですか?」
まぁこの程度で鮫島が死ぬとは思っていなかったので、クロノは何もせずその場を離れただけなのだが。
「ところで今のは一体……?」
首を傾げる鮫島に、クロノ自身も半信半疑の答えを返した。
「隕石なんじゃないかと」
「…………」
珍しく、鮫島が沈黙する。
やがて口を開くと、
「嘘から出た誠、というやつなのでしょうか……」
首を傾げながら、そう呟いた。
それに、クロノは何と答えて良いかわからなかった。
「それで、何でついてくるんですか?」
「いえ深い意味は特に」
クロノが再び帰路に着くと、相も変わらず鮫島も後をついてくる。
鮫島自身は何かいたずらをしたいのかもしれないが、今日に限ってはどうにもそのチャンスを逃してしまっているようだ。
その逃がしてしまう理由を思うと、クロノは少々薄ら寒いものを感じている。
(先程から、嘘をつこうとして失敗してるんだよな)
二連続。それを偶然と片付けるべきか、必然と片付けるべきか。運命の女神のいたずら辺りがふさわしい気もするが。
「む、クロノ様」
「なんですか?」
「あなたを狙う刺客が!」
突然声を上げる鮫島に対し、クロノは冷めた様子で周囲を見渡す。
当然、何もいないし、気配もない。
「嘘ですか」
「はい。嘘でござ……」
「そこの執事……何で気が付いた?」
鮫島の言葉を遮って、何も無い空間に魔法陣が出来たと思うと黒ずくめの男が姿を見せた。
嘘から出た誠。怪我の功名。馬鹿に出来ない四月馬鹿。
「まぁ、何でもいいか」
「なに?」
クロノが思わず漏らした男は眉を顰める。
「ああ。気にしないでくれ。君のコトを三流だと思っただけのコトだ」
「貴様……ッ!」
気配の消し方も魔力の消し方も完璧だった。
鮫島が言った他愛のない嘘を真に受けて姿を見せたのが運の尽きといえよう。
一流なら、すぐに姿を見せずに様子を見ただろう。そして様子を見ていれば鮫島のネタ晴らしに気付けたはずだったのに。
執事に見抜かれたことでプライドが傷ついたののだろう。それで苛立っていたところへ、クロノの言葉だ。どうやら相当、頭に来たらしい。
だが、クロノからすれば、ますます三流だと言わざるをえない。
「暗殺者を気取るなら、ここで冷静さを失ったらダメだと思うんだが?」
踊りかかってくる刺客を見据え、クロノは一歩踏み込んだ。
「…………あの、クロノ様」
「鮫島さん。今日はもう喋らない方が良い気がしますよ?」
「…………………」
二度あることは三度ある。あるいは三度目の正直か。
刺客を拘束し、エイミィへ連絡し終えたあとで、声を掛けてきた鮫島にクロノは、思わず告げた。
「色々と用意はしておいたのですが……」
どこか寂しそうである。
「前フリが成功してないんですから、出番もないんじゃないですか?」
「そうでございますね……」
どうにも元気が無い。
「何が悪かったのでしょうか?」
「いたずらそのものが悪いと言えば悪い気がしますが――それでもまぁ強いて言えば、今日の鮫島さんの運勢が、ではないかと」
「運勢ですか」
「ええ」
「運勢ならば仕方がないですね」
コーケコッコー!
「…………」
突然響いたニワトリの鳴き声に、クロノはビクリとするが、執事は至って冷静に懐から懐中時計を取り出した。
「そろそろお嬢様のお茶の時間でございますな」
とてもしょんぼりとした様子で、鮫島が呟く。
「このような不本意なタイムアップは初めてでございます」
「でしょうね」
「…………」
しばらくは肩を落とした様子だったが、そこはプロの執事だ。
大きく息を吐いた後、シャキッと姿勢を但し、恭しくクロノへと頭を下げた。
「それでは失礼致しますクロノ様。本日はご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
「まるで普段は迷惑掛けてないとでも言うような言い方ですが――まぁそういう日もあるでしょうから、お気になさらず」
「ところでクロノ様……帰る前に実は一つ言っておきたいコトがございまして」
「なんですか?」
「――嘘、でございます」
「……この期に及んで何が【嘘】なんですか?」
クロノの返答に、鮫島も困った顔をして答える。
「何かがそうであればよかったなぁ……と」
そうして鮫島は改めて頭を下げると、とても哀しそうに去っていくのだった。
隕石辺りがパカりと開いて【嘘ぴょ~ん】などと旗が出てくれば救いもありそうなものであるが、それもなかったのだから、今回は本気で鮫島は本領を発揮出来なかったのだろう。
「されたらされたで嫌だったけど」
だからといってあそこまで気落ちされると、何だか申し訳なくなってしまうのは、自分の人の良さ故なのだろうか。
「あ、あの」
「なんだ?」
ストラグルバインドをした上で、鮫島が用意してくれた簀巻きセットで拘束し、転がしておいた刺客が声を掛けてくる。
「じ、実は俺、あの執事の用意した偽の殺し屋で――」
「だとしたらあの人は簀巻きセットなんて用意しませんよ。タチの悪いいたずらをする人ではありますが、一線を越えるいたずらはしない人ですから」
「そこはほら手違いとかだって……」
「まぁそれならそれでも僕は構わないんだが」
「え?」
「あの人の知り合いなら、多少は無茶しても平気なんでしょう?」
「え、えーっと……」
「騒いだら騒いだで厄介ではあるが、騒ぎもなく何らかのオチも無い――というのはどうにも張り合いがなくて落ち着かなかったところでもある」
「何を言って……」
「こういうのを何と言ったか……ああ、そうだ。爆破オチだ。物足りないと思ってしまう時点で僕も相当毒されてしまっているのかもしれないが」
「ちょ……なんでデバイスをこちらに……ッ!?」
「ブレイズカノン!」
男の言葉など無視して、クロノが魔法を解き放つ。
青白い閃光と爆音は彼を悲鳴ごと飲み込んだ。
「無意味な暴力って虚しいな」
宙を舞う刺客を見ながらクロノが呟く。
「なら……やるなよ……」
地面に落ち、ぐったりとしながら、刺客が呻いたが、それもまた、虚しく空に溶ける。
クロノはデバイスを仕舞い、空を見上げた。
気が付くと、雲は晴れ、気温も元に戻っている。
「嘘をつくって、案外難しいものなんだなぁ」
再び顔を出した太陽に目を細めながら、クロノは思わずそう漏らさずにはいられなかった。
【April not Fool - cloused.】
≪ 続きを隠す
2012,04,01, Sunday
少し(?)遅くなっちまいましたが、
リリカルマジカル13に参加された、
スタッフさん、
サークルさん、
一般さん、
みなさんお疲れ様でした。
当サークルの本を手にとって頂いた方々、
買って頂けた方々、
ありがとうございます。
差し入れや新刊を下さった方、ありがとうございますw
美味しく頂きました。
……ってまぁ、なんかテンプレ化してる気がするけど、
お気になさらずw
今回のお隣さんは……
・ 大黒堂さん
http://www8.plala.or.jp/claw/
・Eternal Bladeさん
http://muramasaeternalblade.blog22.fc2.com/
大黒堂さんとはここ最近、よくご近所になる気がw
それはそれとして、両サークルさん、お世話になりました。
また次の機会にもよろしくおねがいします。
次回のイベント参加予定はコミケなんですけど、
北乃のプライベート些か怪しい……。
今年は色々と北乃的には転換期のようで、
プライベートで変なイベントやフラグが乱立してます。
未来は予測不可能ですので、
まぁアレです。当日に近づかないと予定がまったくわかりませんw
なので、そのときはそのときでよろしくおねがいしまーす。
≪ 続きを隠す
リリカルマジカル13に参加された、
スタッフさん、
サークルさん、
一般さん、
みなさんお疲れ様でした。
当サークルの本を手にとって頂いた方々、
買って頂けた方々、
ありがとうございます。
差し入れや新刊を下さった方、ありがとうございますw
美味しく頂きました。
……ってまぁ、なんかテンプレ化してる気がするけど、
お気になさらずw
今回のお隣さんは……
・ 大黒堂さん
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・Eternal Bladeさん
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大黒堂さんとはここ最近、よくご近所になる気がw
それはそれとして、両サークルさん、お世話になりました。
また次の機会にもよろしくおねがいします。
次回のイベント参加予定はコミケなんですけど、
北乃のプライベート些か怪しい……。
今年は色々と北乃的には転換期のようで、
プライベートで変なイベントやフラグが乱立してます。
未来は予測不可能ですので、
まぁアレです。当日に近づかないと予定がまったくわかりませんw
なので、そのときはそのときでよろしくおねがいしまーす。
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2012,02,24, Friday
どもー 北乃です。
次のリリカルマジカルには、
どうにもオフセが厳しい様子でござんす。
なのでまぁコピー誌なワケですが、
コピー誌で考えると、結構時間的に余裕が出てくるので、
もしかしたら、2冊になったりするかもなー……
なーんて思っております。
んで、まぁとりあえず書き始めたSSを少しうpるかな、と。
最近、まともに更新してないコトに気が付いたので(ぉ
そんで、新刊が以下のネタなワケなんですが……
需要? ンなもん知ったことかーっ! 書きたいから書くんでぃ!
ちゅーわけで、なのはGoDのアフター(?)ネタ。
エルトリアの未踏遺跡を舞台に6人が大冒険……なのか、これ?
そんなカンジのお話のプロローグでございやす。
※うpってほどなくイラストを頂きました。
許可を頂いたのでSSの巻末に設置。
感謝感激雨霰ッ!!
平木なおりさん、ありがとうございますッ!
――本作は体験版に付き、
製品版と異なる場合が多々あるやもしれませぬ
エルトリア騒動譚
『みなさん、お待ちかねッ!!』
0.
「ここが、レヴィの言ってた遺跡ですね」
次元世界エルトリア。
緩やかに滅びへと向かっているこの世界で、それでも懸命な復興作業を続けているギアーズの一人、アミタ・フローリアンがその遺跡の入り口を見ながら呟く。
「だけどまぁ、なーんでまた未発見の遺跡なんてのが今更出てきたのかしらねぇ」
アミタの妹、キリエもその遺跡の入り口を見ながら首を傾げる。
「死触による岩盤の劣化により、周囲の地層がズレた結果……でしょうか? この近辺は死触の影響はありませんが、大地を根深く蝕んだものは、周辺の地形にも多かれ少なかれ影響を来たしているのではないでしょうか」
フローリアン姉妹に手を貸し、この世界の復興に協力をしているマテリアルズの一人、シュテルの言葉になるほど、と姉妹はうなずいた。
「ねー! 楽しそうでしょー!」
そんなシリアスな会話などものともせず、見た目以上の幼さを見せる水色の少女――マテリアルズの一人――、この遺跡の発見者であるレヴィが、楽しそうに指を差す。
「楽しそうというか……この遺跡が余計な厄介事の種にならんよう祈るだけだがな」
面白くなさそうに遺跡を見遣るのは、マテリアルズの王ディアーチェだ。
不遜な態度と口の悪さから誤解がされやすいのだが、何のかんの言いながらも、マテリアルズやフローリアン姉妹を常に案じている、王様である。
「私は……ちょっとワクワクしてきますけど」
そしてもう一人。ディアーチェと行動を共にする紫天の盟主、ユーリは、むしろレヴィと一緒になってそわそわとその遺跡を覗き込んでいた。
「ユーリ……お前かもか、まったく」
「王。二人のコトは私達が気にかけておけば良いではないですか」
シュテルの言葉に、ディアーチェを仕方がないと嘆息した。
「とっとと調査を済ませるぞ。この中に変な魔獣が封印でもされていたら面倒だ」
「しかも、その封印が解かれでもしたら……なおさら、ですね」
「ま、何が出てくるかなんて、ここでお喋りしてても分からないし――行きましょうか」
キリエの言葉に、アミタと王はうなずき、皆を促す。
そうして、六人はこの未知の遺跡へと足を踏み入れていくのだった。
1.かつて棄てられた鉄の匣(ハコ)
「あ~~れ~~お~~た~~す~~け~~を~~」
「な、何ッ!?」
遺跡に足を踏み入れるなり、闇を引き裂くような怪しい悲鳴が聞こえて来て、みんな思わず足を止める。
「ここまであからさま過ぎるといっそ清々しいですね。無視して行きましょう」
「え? 助けないのシュテるん?」
「極めてどうでも良い厄介事の種であると、私の直感が言っていますので」
レヴィの言葉にシュテルはそう返すものの、アミタとユーリは助ける気満々のようである。
「私達が来る前にもう誰かがここへ足を踏み入れていたようですね」
「トラップか何かが生きていたのでしょうか?」
「きっと、そうかと」
対照的な二組を横目に、キリエがディアーチェに訊ねる。
「王様はどっち派?」
「心情的にはシュテルに賛成ではあるが、放っておいても寝覚めが悪そうな気がしてな」
やれやれと肩を竦めるディアーチェに、キリエは苦笑した。
「そうねー。私も王様に同感」
そういうワケで、多数決によって助けに行くことになった一行である。
もっとも、シュテルは遠い目をしているようだが。
「シュテルは、なんでそんなに嫌そうなんですか?」
「自分でも良く分からないのですが、私とは決して相容れるコトのない何かがそこで待っているような気がして。その……直感的に」
ユーリにそう答えながら、もしそうであったのなら、自分は可能な限り関わらないようにしよう――そう決意するシュテルであった。
2.アレなイントロ黒と赤
悲鳴が聞こえて来た部屋に入ると、そこには何やら大きな見慣れぬ魔獣(?)に踏み潰されている――
「……トカゲ、でしょうか?」
「そう見えるけど……」
トカゲらしき人が二人いた。
魔獣も魔獣で、赤いボディながら、どこかずんぐりとした体と愛嬌ある二つの目が相俟って、巨体ながらも、その全体像はどこか愛らしさを醸しだしている。
「ああ、もし……そこの女性の皆々様。この理由泣き仕打ちをなんトカするのココロ」
「げーっ!」
げしげしと魔獣に足蹴にされる中、懸命にSOSを飛ばしてくるその二匹に、思わず六人は固まってひそひそと秘密会議を開始する。
「彼ら(?)は一体、何なのでしょうか?」
「人なのか、トカゲなのか……はたまた着ぐるみなのか……」
「怪しさマジんこ絶好調よね……」
「私は関わりたくないのですが……」
「しかし放っておくのは正直、寝覚めが悪そうであるが……」
「ねぇねぇみんなこうやって会議するの後にしない?」
珍しくレヴィが正論を言ったところで、トカゲの人から催促の声が届く。
「そ、そんなところでお喋りなんてしてないでーっ! 言葉とは所詮無力なんだトカ……手も足もシッポすら出ないこの状況に、我らの意識と昨日買った株価が急転直下……」
「げー……」
「む。本気でそろそろ助けてやらんとマズそうだ」
「そうそう! 秘密会議は助けた後にしないとッ!」
レヴィは手にしたデバイス・バルフィニカスを戦鎌(サイズ)フォームで起動させると、それを構えて魔獣に躍り掛かる。
「やー!」
切り裂かれバランスを崩す魔獣へ向けて、アミタとキリエが放つバルカンレイドの弾幕が襲い掛かった。
「!」
完全に怯んだその魔獣へ、ユーリは両手から生み出した長いブレードを、ハサミの要領で内側に向けて交差させた。
上下に分断される魔獣。だが、それでもまだ抵抗する意志はあるらしい。
それを危険だと判断したシュテルは、両断された上半身へ向けて熱衝撃はを撃ち放つ。
焼滅の閃光に飲み込まれ、上半身は灰となり、それでもまだ動こうとする下半身へは――
「その姿でなおも抵抗するというか、見苦しい」
ディアーチェが放つ無数の魔力刃が突き刺さり壁まで吹き飛んでいく。
暫く下半身はピクピクと抵抗の意志を見せていたが、やがて動かなくなると、爆発し、消滅した。
「見たコトのない魔獣でしたが、大したコトはなかったようですね」
「大したコトはあったのかもしれませんが、まぁこのメンツですので」
ホッとしたようなアミタに、シュテルが物足りなそうに告げる。
実質、このメンツであれば時代遅れの魔王が出てきても何とかなりそうだとシュテルは考えている。
「はひー……はひー……いたずらに殉職するところであったわ……」
「げっげー……」
ボロボロになってはいるが、二人のトカゲはどうやら無事のようである。
それを見てシュテルは一つうなずいた。
「では先に急ぎましょう。今のような魔獣が他にいたとしたら危険です。遺跡の外に出る前に片付けてしまいましょう」
まるでトカゲの人を無視するかのような彼女の言葉に、うなずいたのは、ディアーチェとキリエのみ。
レヴィは何も考えてなさそうであるが、アミタとユーリの視線は、「え? こんなボロボロの人を無視するのですか?」だ。
トカゲの人達からであったのならともかく、その二人からの視線を、シュテルはともかく、キリエとディアーチェは無視出来ない。
そして、皆が足を止めてしまうのであれば、シュテルも足を止めざるをえなかった。
「ああ! 素晴らしきは強き女性による英雄譚! それがここから始まろうとしているトカッ!」
「ここは危険な遺跡のようですから、あなた達避難された方がいいかと」
トカゲの人の小さい方が言った良く分からない言葉は無視して、アミタが告げる。
それに――
「よくぞ聞いてくれたッ!」
トカゲの人の小さい方は、小躍りするようにうなずいた。
「「何をッ?」」
キリエとディアーチェがツッコミを入れるが、このトカゲ、そんなものなど聞いちゃいない。
「我輩の名前はトカ。そしてこちらが――」
「げっげー」
「助手のゲーくんだ」
トカゲの人の大きい方が、よろしく、と言った様子で頭を下げる。
それに対して、律儀に名乗り頭を下げるアミタとユーリとレヴィを横目に、ディアーチェが訪ねる。
「貴様等はいったいココで何をしておるのだ?」
それに、トカはその言葉を待っていたとばかりに飛び上がって胸を張る。
「我輩らは御覧の通りココロ優しき科学の子ッ! そんじょそこらの野郎じゃ計り知れない魅力を放つ、鉄腕敏腕黒塗りうるしお椀の安楽椅子科学者たぁこのトカ様のコトだトカ」
「どこをどう見てもそうは見えないけど……まぁいいわ。続けて」
「うむ。そうさせてもらおう」
キリエに対し、大仰にうなずき、トカは続ける。
「あちこちが綻びかけのこの世界。されどこの場所は無駄に恵まれた素敵な大地。緑の少なきこの世の中で、ここを拠点に、その恵まれっぷりをアピールして、素敵アトラクションを作ってやれば行楽シーズンうっはうは。アトラクションを作るためにもまずこの遺跡の内部調査が必要であるのだトカ。これぞ科学の本懐ッ! やめられないとまらない科学発破変遷ッ!」
「たっのしそー!」
「げっげっげー!」
「そうであろう。そうであろう」
何やらテンションを上げているレヴィ達を横目に、キリエが冷静に告げる。
理解出来ない彼らの怪しさと、関わっても良いことななさそうな気配に、一秒でも早くこの場を去るべきだと、キリエの中の何かが訴えているのである。
「立派な心がけです。私たちには理解できませんけど。とにもかくにも、私たちも急いでいますので、それでは――」
そうして、キリエとディアーチェは全員を無理矢理引っ張るようにこの部屋を後に――
「置いてかないでーッ!」
――しようとしたところで、トカは叫び声を上げる。
キリエとディアーチェはこめかみを押さえつつ、シュテルを見遣った。
彼女はこちらに視線を合わせぬように、ぷいっとそっぽを向いた。正しかった。間違いなく彼女の直感は正しかった――その意味を噛み締めながら、キリエとディアーチェは大きく息を吐きながら、トカへと向き直る。
魔法か何かで吹っ飛ばして先へと進めれば一番良いのかもしれないが、ピンチのところを助けた直後であるし、何よりアミタとユーリという優等生コンビがここにいるのだ。そんなことをすると、余計に問題がこじれてしまいそうである。
「ここは一つ、戦力アップといくのはどうであろう? 悲喜交々のイベントが、今後の展開を彩るトカ、彩らないトカ」
「良いじゃないですかキリエ。旅は道連れといいますし」
「そうですよディアーチェ。私は面白そうな人達だと思いますよ?」
それはつまり、この二匹が作るであろう苦労の全てを、キリエとディアーチェに任せるという言葉に他ならないのだが、きっとこの二人にそんな他意など一切ない。
純粋な好意だ。悪い人ではないのだから、一緒に行動しても問題はない――そんな単純でお人好しな心理なのだ。
だからこそ、キリエとディアーチェは邪険に出来ない。ちなみに、シュテルは我関せずを貫くようである。レヴィには訊くだけ無駄そうだ。
キリエとディアーチェは顔を見合わせると、重々しく嘆息した。
「……よかろう。ならばこの遺跡だけは行動を共にするコトを許可してやる。ただし――くれぐれも我等の足を引っ張るなよ?」
半眼になってそう言ってやると、トカは
「わ~おッ! 恐悦至極ッ!!」
と、喜びをジャンプで表現してのける。
「引っ張らない足は唯一にして絶対の離れ業にして得意技ッ! 今日という日のために生まれてきたも同然」
「げっげー!」
「本当は頭を三度ほど下げてもらいたいところだが、義に生きるカッコイイ我輩らのコト! 知将として門に下りましょうぞ!」
自分から一緒に連れて行って欲しいと言ってきておきながら、許可するとこの態度。本気で頭痛がしてくるキリエとディアーチェだが、アミタとユーリは二人をあっさりと受け入れている。
「王様、頭痛薬持ってない?」
「そういう貴様こそ、胃薬を持っておらぬか?」
シュテルはどうやらトカとゲーの半径三メートル内に入らないと決めたようである。
「げっげー……げげ、げっげげー?」
「うむ。実は我輩も似たようなやりとりをかつてしたコトがあるような気がしたトカしてないトカ。もしかして予知夢のような明晰夢に見せかけた過去?」
「げっげー……」
「所謂デジャビュってやつですか?」
「げー」
「ゲーさんって大きいですねー」
「ねぇねぇゲー! 肩に乗せてー」
「げっげっげー」
「わーい」
「あ、レヴィずるいです」
「げー」
「あ、ありがとうございます」
「ごめんなさいね、ゲーさん。ユーリとレヴィが我侭言って」
「げーげーげー♪」
「なんというげゲーくん人気絶頂株にしてストップ高ッ! 鰻登りする鯉幟の如くである。その滝登りっぷりに、我輩嫉妬で倒れそう……我輩を無視しないでーっ! うさぎだってトカゲだって淋しくなると死んじゃうだトカーっ!」
「……おい、キリエ。頭痛薬を持っておらぬか」
「……そういう王様こそ、胃薬持ってない?」
もちろん、シュテルは遠巻きからこちらを眺めているだけである。ずるい。

Illus.Naori Hiraki
≪ 続きを隠す
次のリリカルマジカルには、
どうにもオフセが厳しい様子でござんす。
なのでまぁコピー誌なワケですが、
コピー誌で考えると、結構時間的に余裕が出てくるので、
もしかしたら、2冊になったりするかもなー……
なーんて思っております。
んで、まぁとりあえず書き始めたSSを少しうpるかな、と。
最近、まともに更新してないコトに気が付いたので(ぉ
そんで、新刊が以下のネタなワケなんですが……
需要? ンなもん知ったことかーっ! 書きたいから書くんでぃ!
ちゅーわけで、なのはGoDのアフター(?)ネタ。
エルトリアの未踏遺跡を舞台に6人が大冒険……なのか、これ?
そんなカンジのお話のプロローグでございやす。
※うpってほどなくイラストを頂きました。
許可を頂いたのでSSの巻末に設置。
感謝感激雨霰ッ!!
平木なおりさん、ありがとうございますッ!
――本作は体験版に付き、
製品版と異なる場合が多々あるやもしれませぬ
エルトリア騒動譚
『みなさん、お待ちかねッ!!』
0.
「ここが、レヴィの言ってた遺跡ですね」
次元世界エルトリア。
緩やかに滅びへと向かっているこの世界で、それでも懸命な復興作業を続けているギアーズの一人、アミタ・フローリアンがその遺跡の入り口を見ながら呟く。
「だけどまぁ、なーんでまた未発見の遺跡なんてのが今更出てきたのかしらねぇ」
アミタの妹、キリエもその遺跡の入り口を見ながら首を傾げる。
「死触による岩盤の劣化により、周囲の地層がズレた結果……でしょうか? この近辺は死触の影響はありませんが、大地を根深く蝕んだものは、周辺の地形にも多かれ少なかれ影響を来たしているのではないでしょうか」
フローリアン姉妹に手を貸し、この世界の復興に協力をしているマテリアルズの一人、シュテルの言葉になるほど、と姉妹はうなずいた。
「ねー! 楽しそうでしょー!」
そんなシリアスな会話などものともせず、見た目以上の幼さを見せる水色の少女――マテリアルズの一人――、この遺跡の発見者であるレヴィが、楽しそうに指を差す。
「楽しそうというか……この遺跡が余計な厄介事の種にならんよう祈るだけだがな」
面白くなさそうに遺跡を見遣るのは、マテリアルズの王ディアーチェだ。
不遜な態度と口の悪さから誤解がされやすいのだが、何のかんの言いながらも、マテリアルズやフローリアン姉妹を常に案じている、王様である。
「私は……ちょっとワクワクしてきますけど」
そしてもう一人。ディアーチェと行動を共にする紫天の盟主、ユーリは、むしろレヴィと一緒になってそわそわとその遺跡を覗き込んでいた。
「ユーリ……お前かもか、まったく」
「王。二人のコトは私達が気にかけておけば良いではないですか」
シュテルの言葉に、ディアーチェを仕方がないと嘆息した。
「とっとと調査を済ませるぞ。この中に変な魔獣が封印でもされていたら面倒だ」
「しかも、その封印が解かれでもしたら……なおさら、ですね」
「ま、何が出てくるかなんて、ここでお喋りしてても分からないし――行きましょうか」
キリエの言葉に、アミタと王はうなずき、皆を促す。
そうして、六人はこの未知の遺跡へと足を踏み入れていくのだった。
1.かつて棄てられた鉄の匣(ハコ)
「あ~~れ~~お~~た~~す~~け~~を~~」
「な、何ッ!?」
遺跡に足を踏み入れるなり、闇を引き裂くような怪しい悲鳴が聞こえて来て、みんな思わず足を止める。
「ここまであからさま過ぎるといっそ清々しいですね。無視して行きましょう」
「え? 助けないのシュテるん?」
「極めてどうでも良い厄介事の種であると、私の直感が言っていますので」
レヴィの言葉にシュテルはそう返すものの、アミタとユーリは助ける気満々のようである。
「私達が来る前にもう誰かがここへ足を踏み入れていたようですね」
「トラップか何かが生きていたのでしょうか?」
「きっと、そうかと」
対照的な二組を横目に、キリエがディアーチェに訊ねる。
「王様はどっち派?」
「心情的にはシュテルに賛成ではあるが、放っておいても寝覚めが悪そうな気がしてな」
やれやれと肩を竦めるディアーチェに、キリエは苦笑した。
「そうねー。私も王様に同感」
そういうワケで、多数決によって助けに行くことになった一行である。
もっとも、シュテルは遠い目をしているようだが。
「シュテルは、なんでそんなに嫌そうなんですか?」
「自分でも良く分からないのですが、私とは決して相容れるコトのない何かがそこで待っているような気がして。その……直感的に」
ユーリにそう答えながら、もしそうであったのなら、自分は可能な限り関わらないようにしよう――そう決意するシュテルであった。
2.アレなイントロ黒と赤
悲鳴が聞こえて来た部屋に入ると、そこには何やら大きな見慣れぬ魔獣(?)に踏み潰されている――
「……トカゲ、でしょうか?」
「そう見えるけど……」
トカゲらしき人が二人いた。
魔獣も魔獣で、赤いボディながら、どこかずんぐりとした体と愛嬌ある二つの目が相俟って、巨体ながらも、その全体像はどこか愛らしさを醸しだしている。
「ああ、もし……そこの女性の皆々様。この理由泣き仕打ちをなんトカするのココロ」
「げーっ!」
げしげしと魔獣に足蹴にされる中、懸命にSOSを飛ばしてくるその二匹に、思わず六人は固まってひそひそと秘密会議を開始する。
「彼ら(?)は一体、何なのでしょうか?」
「人なのか、トカゲなのか……はたまた着ぐるみなのか……」
「怪しさマジんこ絶好調よね……」
「私は関わりたくないのですが……」
「しかし放っておくのは正直、寝覚めが悪そうであるが……」
「ねぇねぇみんなこうやって会議するの後にしない?」
珍しくレヴィが正論を言ったところで、トカゲの人から催促の声が届く。
「そ、そんなところでお喋りなんてしてないでーっ! 言葉とは所詮無力なんだトカ……手も足もシッポすら出ないこの状況に、我らの意識と昨日買った株価が急転直下……」
「げー……」
「む。本気でそろそろ助けてやらんとマズそうだ」
「そうそう! 秘密会議は助けた後にしないとッ!」
レヴィは手にしたデバイス・バルフィニカスを戦鎌(サイズ)フォームで起動させると、それを構えて魔獣に躍り掛かる。
「やー!」
切り裂かれバランスを崩す魔獣へ向けて、アミタとキリエが放つバルカンレイドの弾幕が襲い掛かった。
「!」
完全に怯んだその魔獣へ、ユーリは両手から生み出した長いブレードを、ハサミの要領で内側に向けて交差させた。
上下に分断される魔獣。だが、それでもまだ抵抗する意志はあるらしい。
それを危険だと判断したシュテルは、両断された上半身へ向けて熱衝撃はを撃ち放つ。
焼滅の閃光に飲み込まれ、上半身は灰となり、それでもまだ動こうとする下半身へは――
「その姿でなおも抵抗するというか、見苦しい」
ディアーチェが放つ無数の魔力刃が突き刺さり壁まで吹き飛んでいく。
暫く下半身はピクピクと抵抗の意志を見せていたが、やがて動かなくなると、爆発し、消滅した。
「見たコトのない魔獣でしたが、大したコトはなかったようですね」
「大したコトはあったのかもしれませんが、まぁこのメンツですので」
ホッとしたようなアミタに、シュテルが物足りなそうに告げる。
実質、このメンツであれば時代遅れの魔王が出てきても何とかなりそうだとシュテルは考えている。
「はひー……はひー……いたずらに殉職するところであったわ……」
「げっげー……」
ボロボロになってはいるが、二人のトカゲはどうやら無事のようである。
それを見てシュテルは一つうなずいた。
「では先に急ぎましょう。今のような魔獣が他にいたとしたら危険です。遺跡の外に出る前に片付けてしまいましょう」
まるでトカゲの人を無視するかのような彼女の言葉に、うなずいたのは、ディアーチェとキリエのみ。
レヴィは何も考えてなさそうであるが、アミタとユーリの視線は、「え? こんなボロボロの人を無視するのですか?」だ。
トカゲの人達からであったのならともかく、その二人からの視線を、シュテルはともかく、キリエとディアーチェは無視出来ない。
そして、皆が足を止めてしまうのであれば、シュテルも足を止めざるをえなかった。
「ああ! 素晴らしきは強き女性による英雄譚! それがここから始まろうとしているトカッ!」
「ここは危険な遺跡のようですから、あなた達避難された方がいいかと」
トカゲの人の小さい方が言った良く分からない言葉は無視して、アミタが告げる。
それに――
「よくぞ聞いてくれたッ!」
トカゲの人の小さい方は、小躍りするようにうなずいた。
「「何をッ?」」
キリエとディアーチェがツッコミを入れるが、このトカゲ、そんなものなど聞いちゃいない。
「我輩の名前はトカ。そしてこちらが――」
「げっげー」
「助手のゲーくんだ」
トカゲの人の大きい方が、よろしく、と言った様子で頭を下げる。
それに対して、律儀に名乗り頭を下げるアミタとユーリとレヴィを横目に、ディアーチェが訪ねる。
「貴様等はいったいココで何をしておるのだ?」
それに、トカはその言葉を待っていたとばかりに飛び上がって胸を張る。
「我輩らは御覧の通りココロ優しき科学の子ッ! そんじょそこらの野郎じゃ計り知れない魅力を放つ、鉄腕敏腕黒塗りうるしお椀の安楽椅子科学者たぁこのトカ様のコトだトカ」
「どこをどう見てもそうは見えないけど……まぁいいわ。続けて」
「うむ。そうさせてもらおう」
キリエに対し、大仰にうなずき、トカは続ける。
「あちこちが綻びかけのこの世界。されどこの場所は無駄に恵まれた素敵な大地。緑の少なきこの世の中で、ここを拠点に、その恵まれっぷりをアピールして、素敵アトラクションを作ってやれば行楽シーズンうっはうは。アトラクションを作るためにもまずこの遺跡の内部調査が必要であるのだトカ。これぞ科学の本懐ッ! やめられないとまらない科学発破変遷ッ!」
「たっのしそー!」
「げっげっげー!」
「そうであろう。そうであろう」
何やらテンションを上げているレヴィ達を横目に、キリエが冷静に告げる。
理解出来ない彼らの怪しさと、関わっても良いことななさそうな気配に、一秒でも早くこの場を去るべきだと、キリエの中の何かが訴えているのである。
「立派な心がけです。私たちには理解できませんけど。とにもかくにも、私たちも急いでいますので、それでは――」
そうして、キリエとディアーチェは全員を無理矢理引っ張るようにこの部屋を後に――
「置いてかないでーッ!」
――しようとしたところで、トカは叫び声を上げる。
キリエとディアーチェはこめかみを押さえつつ、シュテルを見遣った。
彼女はこちらに視線を合わせぬように、ぷいっとそっぽを向いた。正しかった。間違いなく彼女の直感は正しかった――その意味を噛み締めながら、キリエとディアーチェは大きく息を吐きながら、トカへと向き直る。
魔法か何かで吹っ飛ばして先へと進めれば一番良いのかもしれないが、ピンチのところを助けた直後であるし、何よりアミタとユーリという優等生コンビがここにいるのだ。そんなことをすると、余計に問題がこじれてしまいそうである。
「ここは一つ、戦力アップといくのはどうであろう? 悲喜交々のイベントが、今後の展開を彩るトカ、彩らないトカ」
「良いじゃないですかキリエ。旅は道連れといいますし」
「そうですよディアーチェ。私は面白そうな人達だと思いますよ?」
それはつまり、この二匹が作るであろう苦労の全てを、キリエとディアーチェに任せるという言葉に他ならないのだが、きっとこの二人にそんな他意など一切ない。
純粋な好意だ。悪い人ではないのだから、一緒に行動しても問題はない――そんな単純でお人好しな心理なのだ。
だからこそ、キリエとディアーチェは邪険に出来ない。ちなみに、シュテルは我関せずを貫くようである。レヴィには訊くだけ無駄そうだ。
キリエとディアーチェは顔を見合わせると、重々しく嘆息した。
「……よかろう。ならばこの遺跡だけは行動を共にするコトを許可してやる。ただし――くれぐれも我等の足を引っ張るなよ?」
半眼になってそう言ってやると、トカは
「わ~おッ! 恐悦至極ッ!!」
と、喜びをジャンプで表現してのける。
「引っ張らない足は唯一にして絶対の離れ業にして得意技ッ! 今日という日のために生まれてきたも同然」
「げっげー!」
「本当は頭を三度ほど下げてもらいたいところだが、義に生きるカッコイイ我輩らのコト! 知将として門に下りましょうぞ!」
自分から一緒に連れて行って欲しいと言ってきておきながら、許可するとこの態度。本気で頭痛がしてくるキリエとディアーチェだが、アミタとユーリは二人をあっさりと受け入れている。
「王様、頭痛薬持ってない?」
「そういう貴様こそ、胃薬を持っておらぬか?」
シュテルはどうやらトカとゲーの半径三メートル内に入らないと決めたようである。
「げっげー……げげ、げっげげー?」
「うむ。実は我輩も似たようなやりとりをかつてしたコトがあるような気がしたトカしてないトカ。もしかして予知夢のような明晰夢に見せかけた過去?」
「げっげー……」
「所謂デジャビュってやつですか?」
「げー」
「ゲーさんって大きいですねー」
「ねぇねぇゲー! 肩に乗せてー」
「げっげっげー」
「わーい」
「あ、レヴィずるいです」
「げー」
「あ、ありがとうございます」
「ごめんなさいね、ゲーさん。ユーリとレヴィが我侭言って」
「げーげーげー♪」
「なんというげゲーくん人気絶頂株にしてストップ高ッ! 鰻登りする鯉幟の如くである。その滝登りっぷりに、我輩嫉妬で倒れそう……我輩を無視しないでーっ! うさぎだってトカゲだって淋しくなると死んじゃうだトカーっ!」
「……おい、キリエ。頭痛薬を持っておらぬか」
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