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さらしモノ01
 などというタイトルで、
 さらし娘の絵でもうpればウケたかもしれないけれど、
 しかし、北乃にそんなスキルはないのであった。残念。

 そんなワケで、
 途中まで書いて絶賛放置しているSSを、
 サラしてみようというのがこのコーナーであります。
 その場しのぎとか場つなぎとか言うな。

 今回は(次回があるかは不明)
 なのはStS×WAなネタだったりします。

 ルビを多用していながら、
 このブログの性質上ルビ使えないので、
 読みづらいですが仕様です。

 なお、このSSがいつ完成するかは北乃にも未定。
 まぁ、北乃の書きかけSSフォルダの中はそんなのばかりですが(ぁ

 では、
 魔法少女リリカルなのはXA(クロスアームズ)(未完成)
 始まりますが終わりません。
 途中で途切れてもキレない人は続きを読むからどうぞ。
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 魔法少女リリカルなのは A



   0.想い出、その身に刻みて


 いつからだろうか。
 自分が流れ始めたのは――

 いつなのだろうか。
 自分が生まれたのは――

 ソレに自らの意思なるものが存在するのであれば、もうそろそろそんな事を考え始めてもおかしくない程の長い時……

 幾千、幾万の時と世界を渡りて――
 ソレはあらゆるものをその身に刻んだ。

 そして、これからも刻み続けるだろう。

 アレは【渡り鳥】だと誰かが云った。
 上手い喩えだと、誰かが笑った。

 もしソレが意志を持っていたのなら、
 そんな会話をどう思ったか。

 夢。希望。悪夢。絶望。栄光。挫折。
 葛藤。苦悩。歓喜。感涙。祝福。怨念。
 出会いと別れ。始まりと終わり。
 人と魔獣と――剣と魔法と――
 思いと想い出、想いと思い出。

 基は我が生まれし時より刻まれしモノ――

 空を裂く喜び(レビテーショングリーン)。海を割る涙(シャットダウンブルー)。今を押し流す朝日(ノックアウトパープル)。

 それを巡って交差する重い想いと、思う想いと。
 幾度と時を渡り、幾度と異なる世界に具現しようとも、それらは必ず世界に在った。
 消える事無き【セカイ】の想い出(メモリー)。

 基は荒野でこの身に刻んだモノ――

 創られし希望の翼(ラグナイト)。聖剣が認めし否英雄(ウィンチェスター)。

 純粋で高潔たる理想(ヴァージニア)。鋼に宿る希望(ラグナイト)。

 穢れ無き無垢(マーヴェリック)。知恵の種を蒔く者(スターク)。

 彼らは想い出を重ねて思い出を担うモノ達。 手にした思いで明日の想い出を守るモノ。生んだモノ。育んだモノ。世界が違えど荒れ果てた大地にて、自らの魂に自由を問うたモノ達の信念(アームズ)。

 基は気付くと刻まれていたモノ――

 頭の中はいつも春(プランクトン)。恋色の大砲撃(マスタースパーク)。紅月ノ宴(スカーレッド)。

 気がつけば、そこに在り。気がつくと、そこに無く。うつろう幻想の中に在る神秘の果て。されど、汝らが心、なにものにもとらわれぬ夢を持つ。そこは近くて遠い幻想の果て(フラットランド)。


 基はかつてこの身に刻みしモノ――

 白き活力の炎(ホワイトホワイトフレア)。 ドラゴンも跨いで通る(スレイヤーズ)。

 日々を営む錬金術師(トラウム)。水上の灯り(ウンディーネ)。愛だよ愛(アルカナハート)。

 鋼の後継者(サクセサー・オブ・レザーエッジ)。すっとこどっこい錬金術師(マルローネ)。

 聖なる焔の光(ルーク)。青い瞳の刀使い(ソードダンサー)。炎の魔女(ケイオス・ウィッチ)。

 偉大なる魔法使い(マギステル・マギ)。王者の風(キング・オブ・ハート)。赤いのに(チヨチチ)。

 世界が違えど、次元が違えど、時が違えど。
 この身に刻めた事を喜びだと思える輝きを持つモノ達。基らが知る知らぬ、自覚のありなし関係なく、気付けば何らかの中心の居る存在(ヒーロー)。

 そして……是より先で出会うモノ――

 不屈の魂(レイジングハート)。優しき閃光(バルディッシュ)。
 駆け抜ける想い(マッハキャリバー)。夢見る幻影(クロスミラージュ)。
 真摯な雷光(ストラーダ)。竜と謳う慈愛(ケリュケイオン)。

 そして――

 ふと……そこまで自身のデータを整理して、ソレは違和感に気が付いた。
 ありとあらゆるモノを、自分自身が目にしたものをソレは自分の中に刻み込む。
 だが――
 なぜ、まだ刻んだ記憶のないモノが記録されていたのか。
 ソレに意志があったなら、その感覚を不安と呼ぶか、希望と呼ぶか、それとも――

 ソレは、刻んだモノを使って望みを叶えた。
 ソレは、願いを叶える悪魔だと誰かが言った。
 ソレは、悲劇を呼び戻す天使だと誰かが言った。

 ソレに、最後の刻まれる言葉は何か?
 ソレに、旅の終焉は訪れるのか?

 ソレが、創造主の命を思い出す。
 しかし――


 ソレを【世界】のようなモノだと誰かが云った。
 的を射た喩えだと、誰かが唸った。
 馬鹿な喩えだと、誰かが嗤った。

 我にすがるモノよ聞け。
 我は穢れた想い出(ダーティメモリア)。汝が過去を濁す人形なり。
 それすら汝、厭わぬば、我は汝が願い叶えよう。




   1.来訪者、荒野に来たりて

「パパぁ起きてってばぁ!」
 ベッドの上で、顔まで布団を被って寝ている父親を少女は、一生懸命揺らして声をかける。
「んー……あと、五年……」
「そんなに寝ちゃだめぇ!」
 ゆさゆさと少女は持てる力を持って精一杯揺さぶるが、大した効果はないようだ。
「ママにご挨拶しに行くんでしょう?」
「ううっ……そーは言ってもだなぁ……」
 ようやく布団から頭を出して父は呻く。
 小さな食堂を営んでいる彼女の父親は、昨晩お客さんと夜遅くまで飲み交わしていたのだが――早寝早起きが習慣付いている健康優良児な少女にはまったく関係のないことだった。
「パパが起きてくれないなら、わたし……ひとりでママのところに行ってくるよ?」
「おー……そうしてくれると、俺は寝れる……」
「ぷー。じゃあラクウェル、ひとりでママにご挨拶してくるからね?」
「おー……気ぃ付けてなぁ……」
 投げやりに手を振って、再び布団を被った父親に、とうとう怒った少女――ラクウェルは、
「パパの馬鹿ぁッ!」
 大声でそう怒鳴りつけると、乱暴に部屋のドアを閉めて出て行った。
 娘の怒鳴り声が二日酔いの脳を刺激する。
「ぐぅぉぉぉ……」
 キンキンと叫ぶ頭に軽く悶えながら、彼はゆっくりと身体を起こした。
「……あー……小(リトル)ラクウェルの奴――独りでどこに行くって……?」
 最悪な気分に顔を歪めながら、娘の出て行ったドアを見遣りつぶやく。
 時計を見る。いつもの起床時間よりも一時間遅い。
 途端――断片的だったものが急速に組みあがった。
「あいつ……独りで墓参りか!」
 二日酔いではない別の理由で、父親の顔は青くなる。
「ったく――…街の外には独りで出るなとあれほどッ!」
 数分前に寝言同然に言い返したセリフなど覚えていない父親は慌ててベッドから飛び降りた。
 が――
「……ううっ……頭痛てぇ――気分悪ィ……」
 すぐさま蹲ってしまった。
「酔い覚ましの魔術とかないのかねぇ……」
 ないのは分かっていながらそう嘯き、ベッドに掛けてあったジャケットを引っ掴んで何とか厨房へ。
 そこで水を一杯あおると、多少なりとも落ち着いた。
「よしッ! どうか危険な目にあってたりしませんようにッ!」
 コップを乱暴に流しの洗い物入れへ放り込むと、彼は慌てて家を出た。


 毎朝、決まった時間に起きて――今日みたいに時々は遅くなることもあるが――彼女はいつも、ママへおはようを言いに行く。
 街から少し出たところにある墓地。
 距離としては大したことのない距離ではあるものの、街を出れば魔獣に襲われる危険があるから一人では行かないようにと、パパ――アルノーから耳にタコが出来るほど言い聞かされている。
 だが、
「起きないパパが悪いんだもん」
 ほっぺたをぷっくりと膨らませながら、ラクウェルは不満たらたら、申し訳程度に整備された墓地への街道を歩いていた。
 腰元には一振りの剣――小ラクウェル用にアルノーが手に入れてきた、子供サイズの両手剣。そして朝食用のサンドイッチとミルクが入ったバスケット。
 いつもは挨拶の後、家に帰っての食事だが、遅くなってしまった今日はママと一緒に食べる予定だ。
「あ、そういえばひとりでまちの外に出たのってはじめてだ」
 ふと、そんな事に気がついて、ラクウェルは足を止めた。
 パパが一緒に来ない時は、必ず別の誰かが横に居た。だが、今日はいない。
 キョロキョロと辺りを見渡す。
 独り――ただそれだけの事なのに、いつもの街道の景色とは違って見えて……ワクワクしてきた。
「空を~♪ 見上げる君がいるから~♪」
 膨れた鴉がなんとやら――独りで街道を歩くのがちょっとした冒険に思えた途端、上機嫌になって歌まで口ずさみ始める。
 魔獣が出てきたりしないかと、少しドキドキしながらも、結局何事もなく無事墓地に、
「と~ちゃく♪」
 ポンと小さくジャンプして、街道と墓地の境界を飛び越える。
「あれ?」
 墓地に先客がいて、ラクウェルは首を傾げた。
 この墓地で眠るほとんどの人は、彼女が住む港町ポート・ロザリアの中でも、海から一番遠い区画に住む人の関係者だ。
 そのことは知識として知らなくても、ラクウェル自身何となく気が付いている事で、見知らぬおじさんが墓地にいる事は珍しい事なのである。
「おはようございます。おじさんも誰かにご挨拶ですか?」
 ここにお墓参りをしている人は、ご近所さんのお友達――だから自分も友達になれるかも……そんな子供らしい無垢な思考で、ラクウェルは男に声をかけた。
「……ッ!」
 その時、不自然にビクっと男は身体を震わせたのだが、
「ま、まぁ――そんなところだよ」
「わたしもママにご挨拶しにきたんですよ」
 ラクウェルはさして気にせず、にっこりと笑った。
「そうなのかい」
 引き攣った笑みを浮かべる男の様子にラクウェルは首を傾げる。
 もっとも変な人だとは思うが、怪しい人だとは思わなかったのでラクウェルは、おじさんに軽く頭を下げてからママのお墓へと向った。
「おはようママ。パパがお寝坊さんだったから、おそくなっちゃった。ごめんね」
 ラクウェル・アップルゲイト――ママの名前。
 小(リトル)ラクウェル・G・アップルゲイト――自分の名前。
 自分と同じ名前のママ。
 小ラクウェルという名前は当然、ママの名前からきている。
 パパはよく、小さいラクウェルという意味だと笑いながら教えてくれる。
「あれ? 今は子供だからラクウェル小さいけど、大人になっても小さいラクウェル?」
 良く分からないと小首をかしげ、
「それなら、ママも子供の時は小ラクウェル?」
 やっぱり良く分からないと、可愛らしく眉を顰めた。
 少しして、
「まぁ、いいや」
 こんがらがった思考の糸を解くように頭をふって、ラクウェルはお墓の水を取り替える。
 コップの中の水を捨て、コップを洗ってから今日持って来た水を注ぐ。
 それから、持って来たパンのうち一つを供えて一段落。
「よし」
 いつもならパパと一緒にやっている事を一人でやり遂げた事に満足してから、小さな敷物を一枚引いた。
「――でね、今日は、ママと一緒に朝ごはん」
 可愛らしいピンクの敷物に、ラクウェルはちょこんと座ると、バスケットを小脇に置いて中からサンドイッチを取り出した。
「パパから教えてもらってね。このくらいなら一人でも作れるようになったんだ」
 レタスと、予め薄切りされていたハムを挟んだだけの簡単なもの。パンズに塗られたバターがちょっとはみ出していて、そもそも上下のパンズサイズはかなりずれている。
「ママにも……食べてもらいたかったけど……」
 一生懸命に作ったサンドイッチ。
 それは小さな願い。でも適わないと幼心に理解している事――それを考えると、少しだけ悲しくなるのだが、泣きそうな顔をするといつもパパが大慌てで心配するから……
「いただきます」
 ラクウェルは、きっと後から追ってくるだろうパパに心配をかけないように、笑顔でサンドイッチを頬張った。
「ふぁんばろ(なんだろ)……ふぁれ(あれ)?」
 口にサンドイッチを入れたまま、思わずつぶやく。
 ラクウェルの視線の先にあったのは自分と同じくらいの背丈の一本足で立ってる人形。
 テンガロンハットにポンチョを着た姿の――
「カカシさん?」
 ごくんとサンドイッチを嚥下して、目を細めた。
 そういえば、パパとママが旅してた頃のお話に、お人形やイスを勝手に動かす幽霊とかが居るって話を聞いた覚えがある。
「……ッ!」
 手早く立ち上がると、ラクウェルは剣に手を触れた。相手によってはこっちを襲ってくるかもしれなのだと思い出したのだ。
 まだちゃんと使えなくても、それでも構える事に意味があると、パパが言っていた。
「そう構えなくていいよ、お嬢さん」
 背後からの突然の声に、ラクウェルは慌てて振り向く。
 剣の重みに逆らわず、軽く腰を落とし、鍔元の右手はしっかりと左手は柄尻にそっと触れるように――
「なかなかサマになってるねお嬢さん。でもね、怖がらなくてもいい。おじさんは、別に悪い人じゃない」
 それでもラクウェルは構えを解くことはなかった。
 振り向いた先にいたのは、ここに来た時に声を掛けたおじさん。
 ボサボサ髪に不精ヒゲを生やした、お世辞にも小奇麗とは言えない人。金属で出来た変なプレートみたいな首飾りを下げていて、それが妙に目に付いた。
(どうしよう……後ろのカカシさんもだけど、なんだかこのおじさん――すごい、こわい)
 今更ながら、一人で来なければよかったと思い始める。だが、それは後の祭りだ。
 ちらりと、すぐ横のお墓を見遣る。ママのお墓。
(あ。)
 そこから、ママが見てくれている。それだけで、ほんの少しだけ気が楽になった。
「ああ――後ろのフィギュアは気にしなくていいよ。おじさんのだからね、お嬢さんを襲ったりはしない」
 どうしよう――どうすればいい――?
「おじさんのだから……おじさん次第で、攻撃とかしてくるんでしょ?」
 精一杯強がって、ラクウェルはおじさんを睨みつける。
「中々……賢いね」
 笑うおじさん。だけど、とても怖い。
 後ろの人形――おじさんはフィギュアと呼んでいた――を気にしなくて言いといわれても、目の前に居るおじさんはすごく怪しくて、気にしないわけにもいかった。
「だけど、別に襲わせるような事はさせないよ」
「…………」
 本当か嘘かなど、聞き返す気は起きなかった。嘘であっても本当であっても、まず間違えなく信じちゃいけない人だというのが何となく分かったからだ。
「お嬢ちゃんの願いを聞いてあげようと思ってね。お嬢ちゃん……ママに会いたいんだろう? ママにサンドイッチを食べてもらいたいんだろう? だったらそこのフィギュアに願うといい。アレは願いを叶えてくれる素敵なお人形さ」
 思わずラクウェルは人形の方へと顔を向けた。
(ママに会える…………?)
 おじさんの言葉を反芻するように眉を潜める。
 先程、自分自身で信じるまいと思ったはずなのに。だが、それほどまでに魅力的な言葉をおじさんは言ったのだ。
(…………パパ……)
 パパなら、こんな時にどうするだろう。
 剣を構えながらも、目を伏せて、考え事のしやすい少しだけ楽な姿勢をとる。
 ママはこのお墓の下から、トルドカの園という遠い世界に行っているとパパは言っていた。
 トルドカの園へ至った人はもう帰って来ないという。
(だからママに会えない)
 そこまでは、なんとなくラクウェルにも理解できた。
 だが、どうしてママはトルドカの園へと至ったのか、そこが良く分からない。
 お墓の下で寝るとトルドカの園へと行けるらしいが、そもそも、何でママはここで寝ているのか。
(ママは病気で――寝たまま目をさませなくなったから、パパやまちのみんなが、しずかに眠れるようにって、ここに寝かしてあげたって……パパは言ってたけど……)
 お墓というのはママのように、目を覚ませなくなった人達が眠り、トルドカの園へと旅立つ場所だという。
 そして、パパは言っていた。
(ママを――ママのようにお墓で寝ている人をむりやり起こしちゃいけないって)
 パパが言うにはトルドカの園は入ってくる人を拒まないが出て行く人には厳しいらしい。そしてお墓で寝ている人達は目を覚ますと、その気が無くてもトルドカの園の外へと出てしまう。
 つまり――
(ママも目を覚ましちゃったら、お外に出て、トルドカの園の番人さんにオシオキされちゃうのかな?)
 パパに怒られてゲンコツされるとすごく痛い。それを思い出し、思わず頭を抑えたくなるけどとりあえず我慢。
 ここでママを起こした場合、ママは番人にゲンコツとかされちゃうのかもしれない。ママは何も悪くないのに、ママに会いたいとラクウェルが願うだけでママは怒られてしまうのだ。
(そんなのやだッ!)
 ママを困らせたくない――ようするにラクウェルにとっては、それが全ての結論だった。
「さぁ、フィギュアにママに会いたいと頼んでみたらどうだい?」
「ママには会いたい……だけどッ!」
 ラクウェルは意を決して、おじさんの鼻先目掛けて剣を振り上げた。
「ぬおッ!」
 慌てて身をそらしたおじさんをラクウェルは剣を構えなおして、真っ直ぐに見据える。
「ママは起きたら、トルドカの園の番人さんに怒られちゃうからッ!
 ラクウェルのせいでママが怒られちゃうくらいなら、ママに起きてなんて言わないッ!」
「このガキィッ!」
 それがきっと本性なのだろう。
 先までの人のよさそうな笑み――かなり胡散臭かったが――を引っ込めて、怖い顔で口汚くはき捨てた。
(相手が自分より強そうだったら……)
 パパから教えてもらった事をラクウェルは必死に思い返す。
 力や技、身体の大きさなどで勝てそうにない相手にはどうすればいいか――それはパパの口癖だった。
(どんな相手でも、首から上はカミソリのように鋭くッ!)
 どんなに怖くても、どんなに泣きそうでも、どんなに叫びたくても、グッと堪えて、何とかする方法を考える事。それがどんな相手にも勝つコツで、どんな相手からも逃げるコツだと、パパはよく言っている。
「ガキはガキらしく、ママに会いたいとワガママぶっこいてりゃ良いんだよッ!」
 おじさんが首にかけていたプレートに手を翳す。
「サキコショル!」
 と、
《Stand by Ready. SET UP!!》
それは光り始めて、瞬く間におじさんをも覆いつくす光となった。
 そして、光が収まると、たおじさんが少し変わった形の杖を持ち、変わった服を着て姿を見せた。
 暗い黄色を基調とした、要所要所を動きやすいようベルトで止めた変わった形のローブ。
 多少びっくりはした――だが、
「えいッ!」
 可愛らしい掛け声と共に、今まさにおじさんの手の中に現れた杖へ向かって剣を一閃する。
「うおッ!」
 ラクウェルの剣に弾かれ、おじさんはその手から杖を手放す。
 あれはどう見てもおじさんの武器だ。不思議なプレートの事だとか、どういう風に使うのだとかは関係ない。なんでわざわざ着替えたとか、イチイチ考えずに、とにかく最善だと思った事をラクウェルは行った。
 即ち――杖を弾く。
 あの杖を使われたら、ラクウェルは戦う事も逃げる事も絶対にやり辛くなると判断したのだ。
「もういっぱぁ~つッ!」
 続けざまに、おじさんを剣の腹で殴りつける。刃でやると血が出るし、何より痛そうだから、腹を使う。
 思いっきり横腹を叩いたはずなのに、なぜかおじさんはピンピンしていた。
「杖を弾いたのは悪くない選択だったが、その後の攻撃はダメだよお嬢ちゃん」
 ニィとおじさんは笑う。ものすごく嫌な笑みだ。
「今のは二発目をやらずに逃げるべきだったんだ……よッ!」
 その直後、怒気を孕んだ声を上げて、おじさんはラクウェルを蹴飛ばした。
「ああ――ッ!」
 ママのお墓の前から少し飛んで、ラクウェルは地面を滑る。それでも剣から手を離さなかった自分を、ちょっとだけ褒めてあげたかった。
「ううっ……痛いよぅ……」
 蹴られた所とか、地面に擦ったほっぺたとか――痛くて泣きたかったけど、それでもラクウェルはグッと堪えて立ち上がった。
(どんなに怖くても、どんなに泣きそうでも、どんなに叫びたくても、グッと堪えて――とにかく首から上はカミソリのように鋭く……)
 それはとても難しい事なんだと、ラクウェルは今、初めて知った。
 だけど、パパを家に置いて独りでココへ来てしまった以上、自分で何とかするしかない。
 いずれは自分だって、昔のパパとママみたいに渡り鳥になるんだ。
 独りで荒野に立てば、そう簡単に、誰かに助けてもらえるわけではないんだ。
 自分にそう言い聞かせて、ラクウェルは思いっきりおじさんを睨む。
「気に入らねぇガキだ……とっとと実験済ませて帰りたかったんだがな――気が変わった」
 いつの間にか杖を拾いなおしていたおじさんはそれを真っ直ぐこちら向けながら、告げた。
「強情なガキが泣くところを見て見たくなった」
「べーっだ! ぜったいに泣くもんかッ!」
 何が何でも泣かせると言うおじさんに、ラクウェルは意地でも泣くものかと、決心する。
「口の減らねぇガキが……ッ!」
 ペッと唾を吐き出しながら、おじさんはうめいた。
 ギリっとラクウェルは奥歯を噛み締める。
 おじさんの吐いた唾がママのお墓に当たった。
 物凄く腹が立つ。思いっきり怒りたい。それでもラクウェルは一生懸命にそれを飲み込んだ。
 パパが教えてくれた事を絶対に守る。
 それに飛び掛れば、負けるのはラクウェルだってことくらいは理解できる。
(ごめんねママ……ぜったいに――ぜったいに、ふいてあげるから……ッ!)
 とにかく、何をするのであれ目の前のおじさんをどうにかしないといけない。
 だが、その為の決定打となる方法をラクウェルは思いつかなかった。
 そうこう悩んでいるうちに、向こうは何かをしようとしている。
「ブラストスマッシャー」
 杖を真っ直ぐこちらに向けて、端的に何らかの名称をおじさんが告げると、
《Blast Smasher》
 その手にした杖が復唱した。
 本能的に、ラクウェルはそれがとてつもなく危険なものだと直感する。
 だが、ラクウェルが反応するよりも速くおじさんは――見ようによっては下品とも取れる笑みを楽しそうに顔に貼り付けて――鋭い声を上げた。
「ファイアッ!」
 杖の先端から白い光が爆発した。否、そうとしか捕らえようがないほど強烈な白い光の奔流がラクウェル目掛けて押し寄せてくる。
「あ……」
 間違えなく、自分はコレに飲み込まれるだろうと、ラクウェルはまるで他人事のように思う。
 相当な速さで迫ってくるそれが、ひどくスローモーションに見える視界の中で、黒い何かが眼前に迫る光よりも速い速度で現れると、自分を抱き上げて、現れた時と同じ速度でその場から離脱する。
「大丈夫?」
 ラクウェルを抱き上げながら、そう言って顔を覗き込んで来たのは、見知らぬ――だけど、とても優しそうなお姉さんだった。
 黒い衣装に、風に揺れる金の髪がとてもよく似合っている。
「えっと……」
 何かを言わないといけない。
 そう思って、口を開きかけた時、
「クロスファイアーシュートッ!」
 聞きなれない女の人の声と、
「チィッ!」
 おじさんの舌打ちと、ついでに爆音が聞こえてきて思わずそちらに目を向けた。
 オレンジ色の髪を左右で結んでいるお姉さんが、おじさんに向かってなにかしたらしい。
 手には銃を二挺もっているから、きっとそれで攻撃したんだろう。
「自分で立てる?」
 うなずく。
 すると、お姉さんは微笑んでラクウェルを優しく降ろしてくれた。
「はい、これも」
 それから、パパからもらった剣を渡してもらって、そこでようやくラクウェルは言うべき事を思いついた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
 ちょこんとお辞儀をするラクウェルに、金髪のお姉さんは、やっぱり優しい笑顔を返してくれる。
「よく独りでがんばったね」
 その言葉で、緊張の糸が切れかけて、ラクウェルはグッと堪えた。まだ、終わってはいない。だから、泣いたらダメだ。
「でも、まだ――おじさんを追い払って、ママのお墓をキレイにしてあげないと……」
 ちょっとだけシャクリあげながら、それでも涙は流さずに、剣を強く握り締めてラクウェルは言った。
「強いんだね」
 お姉さんはうなずいて、手を伸ばそうとし――止めた。
 きっとラクウェルの頭をなでようとしたのだろう。でも、止めてもらって助かった。
 今、頭を撫でられたらきっと泣いちゃうだろうから……
「なら、一緒にあのおじさんを懲らしめようか?」
「いいの?」
 普通の大人なら、ラクウェルを足手まといだといい、戦線には絶対に加えてくれない。
 だと言うのに――
「だって、ママのお墓を汚されたんでしょ? あなたには怒る権利があると思うよ」
 真面目な顔で、このお姉さんはそう言った。
「ね?」
 うなずくラクウェルの頭を撫でるのではなく、軽くポンと叩いて、目線を合わせる為に曲げていた腰を伸ばす。
 それから、お姉さんはポケットから金色の三角形の金属片のよなものを取り出すと、まるでそれに声を掛けるように言った。
「バルディッシュ、行くよ?」
《OK!!》
 すると、その三角は返事をして、バチバチと電気を纏うように金色に輝き、やがて、刃のない巨大な剣の柄へと姿を変えた。
「あのおじさんの杖みたい」
「そっか」
 思わずラクウェルがもらした言葉に、お姉さんは小さくつぶやくと真剣な眼差しでおじさんを見やった。
「あとね……」
「なに?」
「あそこにあるカカシさん。お願いするとママをお墓から起こしてくれるって、言ってたよ?」
「え?」
 驚いた顔をして、お姉さんはフィギュアと呼ばれていた人形を見た。
「まさか――ロストロギア?」
 お姉さんの頬に一筋の汗が流れる。
「あなたは、本当に自分が出来ることだけをやるんだよ」
 そう言って、お姉さんはすごい速さで走り出した。
「え?」
 走っていくお姉さんが柄だけの剣を構えると、そこに黄金色の巨大な刃が生まれた。
 その大きさとお姉さんの対比はまるで自分の剣と同じだと、ぼんやりとラクウェルは思い――唐突に、あることが閃いた。
「あのお姉さん、何だかママみたい」
 実際、ママが剣を構えているところはほとんど見た事はないのだが。
 二人のお姉さんを相手にしながら、おじさんはそれでもまだやられていない。
「………………」
 しばしの逡巡。
 そして、ラクウェルは剣を地面に突き刺した。
 今この場で必要なのは、ママの剣じゃなくて、きっとパパの力だ。
 剣と違ってすごく使うのが大変なやつだけど、自分が使う最後の必殺技として、とっておいたとっておき。
 きょろきょろと周囲を見渡し、ラクウェルは絶好のポイントを見つけて、そこへ移動する。
 火の性質を持つエネルギーの溜り場。ただその上を通過するのであれば、別段何の意味のない力の溜り場だが、術式魔法(フォーミュラ)と呼ばれる力を使う人間からすれば、それは重要なポイントとなる。
 最初は剣だけに憧れていたラクウェルだったが、普段はあまりカッコよくないパパが一度だけ見せた、魔術師(フォーミュラユーザー)としての顔がすっごくカッコよくて――ねだって現在進行形で剣と共に教えてもらっている技術。
 今ラクウェルの手札はたった二つだけれど、今はそれで充分だと思った。
「レイ・ポイントの力を借りて――」
 準備は万端。今までの練習も含めたなかで、これでもかという程完璧なまでの術式制御。
 あとはタイミング。
 二人のお姉さんとおじさんのすごい攻守のやりとり。それを邪魔しないように――お姉さん達を巻き込まないようにとにかくタイミングを計る。
 さっき助けてくれた金髪のお姉さんが剣を上段に構えて振り下ろす。
 それを見切ったのかおじさんが後ろに飛び退こうとする。
(ここッ!)
 確信を持って、ラクウェルは魔術を解き放つ。
「ブラストッ!」
 本来は衝撃を炸裂させる魔術であるブラストだが、今はラクウェルの足元に広がるレイ・ポイントの作用によって、火の玉を放つクリメイトへと変化する。
 ラクウェルの掲げた手から放たれた炎は飛び退こうとしたおじさんの背後に炸裂し、爆炎を撒き散らす。
 それにあおられて、バランスを崩したおじさんを、
「はぁぁぁぁぁぁぁッ!」
 金髪のお姉さんの剣が一閃した。


     ――※――


 アルノーが慌てて墓地へやってきてみるなり、目に飛び込んできたのは、娘がレイ・ポイントの上で術式(フォーミュラ)を展開(セットアップ)している姿だった。
「……は?」
 あまりにも予想外すぎるラクウェルの姿に、彼の思考は一瞬だけ止まる。
 だが、すぐさま――娘が術式魔法を使わなければならならいという、のっぴきならない状況に曝されているのだと理解した。
「――ッ!?」
 急いで娘の所へと跳ぶ為の術式を準備し始めながら、墓地の様子を窺った時、彼は我が目を疑った。
 頭の左右で結われた大きなリボン。揺れる長い髪。ギミック付きバスタードソード。
 ラクウェルが援護しようとしている女性が持つ要素が、亡き妻の姿を幻視させたのだ。
 だが、すぐさまに頭を振って、その幻を振り払う。
 よく見なくとも、別人だ。
 嫁さんの髪は金じゃなかったし、ボーリュムこそあったが長さは肩よりも長い程度だ。それに翻(ひるがえ)していたのは白いマントではなく、茶色のロングコートだった。
(娘がヤバいかもしれない時に、俺は何を夢見てるんだッ!)
 どんな時でも首から上はカミソリのように鋭く――それが、自分が持つたった一つの戦い方だ。
 だが、それもしばらく使わない内に刃が曇ってしまっていたらしい。
 軽く深呼吸をして、墓地全体に視線を巡らせる。
 剣を振っている金髪の女性と、見るからにいけ好かない顔をした男。それとその二人を見守りながらも、援護するタイミングを常に窺っている、どこか他人のような気のしない少女。そして娘――ラクウェル。
 それと――
「なんだありゃ?」
 ポンチョとテンガロンハットを身につけたカカシに眉を潜めるが、とりあえずそれは思考の片隅へと追いやる。まずは戦闘を止めるのが先だ。
「ふむ」
 まぁ考えるまでもなく、あの男が娘に何かしようとしていたのを、あの二人の女性が助けてくれたのだろう。
 ならば――と、一つうなずき、アルノーは術式を展開する。
「セットアップ・フォーミュラ」
 術者が術式を展開する際は、だいたい他の術者が気づくものなのだが、制御
と発動のタイミングを見計らうのに必死な娘は気づかない。
 チラリと、銃を構えていた少女がこちらに視線を向けてきた。
 それにアルノーは、人差し指を口元に当ててウィンクを返す。
 その仕草だけで彼女がどれだけの判断をしたのか分からないが、少なくとも味方だとは思ってくれたはずだ。
 すぐさまにアルノーは視線を前線へと戻す。
 相手の隙を見つけたのか、金髪の女性が大上段に剣を構えた。
 一瞬遅れて、ラクウェルが展開していた術式を起動させる。
 タイミングは悪くない。だが、まだ術式魔法という力の使い方に不慣れな娘の術の起動はたどたどしい。発動の仕方しだいでは女性の行動の阻害をしかねない。
「ま、鈍足ぐらいが丁度いい――ってな」
 ニヤリと口の端を釣り上げて、アルノーは男へ向かって手を伸ばし指を鳴らす。
 それよりも一瞬早く、銃使いの方が光弾を二発放っていた。それらは男の足元へと向かっていく。
 剣も光弾も受けるまいとした男は後方へと飛び退こうとするが、アルノーの術式魔法によって生まれた不可視の糸が男へと絡みつき、動きを鈍らせた。
 それとほぼ同時に、男の背後でラクウェルの術式が起動し、爆発を起こす。結果としてそれが男を前へと押し返すことになる。
 無論、剣士の方がそれを見逃すはずがない。
「はぁぁぁぁぁぁぁッ!」
 彼女は気合いと共に、構えた剣を袈(け)裟(さ)懸(が)けに振り下ろした。
「よし、久しぶりでも俺ってば完璧」
 小さくガッツポーズを取ると、アルノーは小走り気味に娘の元へと向かうのだった。


     ――※――


 金色の光る剣に斬られ、おじさんは思い切り吹き飛び、地面を滑っていく。
「やった」
 それを見ながら、ラクウェルはグッと可愛らしくガッツポーズを取った。誰が見ても今のはキッチリと決まっていた。おじさんに怪我がないのを見ると、なにやらそういう不思議な剣のようだけどれど、それでもあれだけ吹き飛ぶようなすごい一撃だ。きっとおじさんも動けなくなるだろう。
「ティアナッ!」
 でも、そうやって喜ぶラクウェルとは裏腹に、剣のお姉さんは鋭く銃のお姉さんの名前を呼んだ。
 すぐに、銃使いのお姉さんはおじさんの方へと走っていく。
 それを追うように、金髪のお姉さんも地面を蹴った。
(まだ……終わってない?)
 でも、なぜ――疑問を抱いたままおじさんの方へと視線向け、そして気が付いた。
「カカシさんがいる……」
 おじさんが吹き飛んだ先、そこにはママをトルトガの園から呼び出せるらしい、ヘンテコな姿のカカシさんがいる。
「まだ、俺の運は尽きてなかったらしいな」
 そのカカシさんに触れながら、おじさんは横になったまま告げた。
「ダーティメモリア! 主の名において願うッ! こいつらを足止め出来る魔獣かなにかを適当に呼び出せッ!」
 ラクウェルですら呆れてしまうほどアバウトな命令に、それでもダーティメモリアと呼ばれたカカシさんは律儀にもそれを聞き届けた。
「なにッ!?」
 おじさんの間に、突然現れた光の渦にお姉さん達は足を止める。
 光はすぐに収まるものの、今度は細い線となり、幾重にも重なって何かの形を作り出す。
 その光景は、3Dで絵を作るさいのワイヤーフレームと呼ばれるものにそっくりであるのだが、そんな言葉も意味も知らないラクウェルは、針金で何か作ってるみたいだと思った。
 ひどくゆっくりと見えたその光の針金細工は、時間にすれば一秒にも満たないうちに完成。同時に、針金の隙間も光で埋められ何らかの形となった。
「亀?」
 ラクウェルの呟きに呼応するように、その光細工は色を、質量を、魂を得てこの場に具現する。
 その姿は確かに亀に似ているが、同時に竜の類にも見える姿をしていた。
 見るからに分厚そうな甲羅を背負い、その甲羅は凶悪なまでに隆起したトゲが生えており、丸太のような両腕の先には長く太い爪が生えている。
 まるで、相手を威嚇し倒す事だけに特化したようなその恐ろしい姿に、ラクウェルは自分でも気が付かないうちに、一歩後ずさる。
「何だか知らないけど、こんなのに構わずアンタを倒せばッ!」
 オレンジ髪のお姉さんがそう言って走り出すけれど、おじさんはダーティメモリアを抱えて宙に浮かび上がってしまう。
「まさか機動六課のお嬢さん方がこんな辺境世界にいるとは思わなかったからな――最悪だったぜ」
「あなたは――」
「だがまぁ、こっから先の俺は、いたずらおじさんじゃなくて、ビジネスおじさんだ」
 ニィと気持ちが悪くなるくらい嫌な笑みを浮かべておじさんは掌サイズの四角い箱を取り出した。
「簡易転移装置ッ!?」
「逃がさないッ!」
 箱に魔方陣が浮かびあがるのと同時に、お姉さん達はおじさんに攻撃しようとするけれど、
「お嬢さん方ッ! タラスクにも注意を向けろッ!」
 すぐさま聞こえてきた、ラクウェルに馴染み深い声による叱責のような言葉に二人はハッとして大きく飛び退いた。
 同時に、亀――タラスクというらしい――の口から紫色の霧のようなものが吐き出される。
「そいつを吸うなよッ!」
 新しく現れた声の主は、お姉さん達に注意を促しながら、同時にラクウェルの口を押さえ、後ろへと一緒に飛び退いた。
 突然に口を塞がれて、ラクウェルは眼を白黒させる。
「大丈夫か、リトル?」
 だが、着地と同時に頭上から聞こえてきた優しい声に、ラクウェルはすぐに顔を輝かせた。
「パパ!」
「まったく、何で俺が居ない時にトラブルと出くわすんだ?」
「ごめんなさい……」
「怒っちゃいないよ」
 ポンポンとラクウェルの頭に軽く手をやって、アルノーはタラスクの方へと視線を向ける。
「随分と懐かしい魔獣が出てきたもんだ」
「パパ?」
「なんでもない」
 そうラクウェルに微笑んでから、アルノーは表情を引き締めた。
 その顔は寂れた食堂の店主の顔ではない――かつて渡り鳥をしていた頃の、魔術師(フォーミュラ・ユーザー)としての顔。
「それではハラオウン執務官。ランスター二等陸士」
 高笑いでもするかのような口調でお姉さん達を呼ぶのと同時に、箱から現れた魔方陣がおじさんを包み込む。
「ごきげんよう」
 その次の瞬間にはおじさんの姿が消えてしまった。
「あいつ……ッ!」
「ティアナ! 今は目の前の亀。気持ち切り替えて!
「…………はい」
 ティアナという名前らしい、オレンジ髪のお姉さんは少しだけ悔しそうな顔をして、でもすぐにキリっと顔を切り替えてうなずいた。
「それじゃあ、お二人さん」
 そこへアルノーが声を掛ける。
「あいつはかなり危険な魔獣でね。放っておくと墓を荒らす程度じゃすまなくなるし、長期戦はやばい相手だ。
 短期決戦でいきたいから、申し訳ないけど、俺の指示に従ってくれなないかな?」
 一瞬、お姉さん達は困った顔をするけれど、ラクウェルを見て小さく微笑むと、再び真面目な顔に戻ってうなずいた。
 どうやら、この人がラクウェルのパパだという事に気が付いたのかもしれない。
「ま、偉そうなコトを言っておいて何だけど、俺、結構ブランクあるから、足引っ張ったらごめんな」
「大丈夫ですよ。倒し方を知っているんですよね? それだけで充分な戦力です」
「娘さんの前でカッコをつけたいんでしょう? フォローしますよ」
「いやはや頼もしいもんだ」
 笑うお姉さん達に、なぜかアルノーは嬉しそうに表情を緩ませながら肩を竦め、それからバシンと両手を合わせて気合いを入れた。
「それじゃあまぁ、カミソリのように鋭い首から上を、数年ぶりに光らせてみるとしましょうか!」




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| kitano | 14:43 | comments (0) | 雑記::北乃ゆうひ |
SC41お疲れさまでした
 サンシャインクリエイション41に参加されたみなさん。
 お疲れさまでした。

 当サークルの本を手にとって下さった方、
 買って下さった方、ありがとうございました。


 HAHAHA…・本が全部、机の上に出せなくなってきたZE☆

 さて、以前の紅月ノ宴に続き、
 今回はサンクリで、壁だったワケですが……

 なんていうか、サンクリの壁補正を甘く見てましたw
 びっくり。補正値+5%な感じ。
 何の補正と聞かれるとちょっと困るけど……えーっと、集客値?
 なんかそんな。
 

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 今回のお隣さん。
 ●ナツオトメさん
 ●GLOREAさん

  お世話になりました。
  ところで、今気が付きましたが、GLOREAさんのお隣は二回目でしたね。
  イベント当日に気が付かなくて、すみません。


 お隣さんではありませんが
 ●茜屋ぐーたら店さん

  色々とお気遣い、ありがとうございました。

  3サークルさん共、また機会がありましたら、
  その時はよろしくお願いします。


 >ミズキっちゃん
  こっちこそ、来てくれた時に、席を外してて申し訳なく。

  ぷっちょの差し入れありがとう。
  美味しく頂きましたぜ(主に七夜がw

  何の因果か今回は壁だったけど、
  まぁ、たぶんたまたまだよ。うん。

  何はともあれ、壁に見合うだけの力を付けないとね。

  改めて、当日はわざわざ来てくれてありがとうね。
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| kitano | 11:20 | comments (0) | 雑記::北乃ゆうひ |
お疲れ&よろしく
 今更に今更な感じで、すごい今更ですが。
 幻想の樹海Ⅲ~幾多の戦士が夢見た妄想の地~
 参加者のみなさん、お疲れ様でした。

 買って下さった方、読んでいって下さった方、ありがとうございます。

 なんでこんなに挨拶が遅れたかって、
 サンクリの原稿をやってましてw
 幻想の樹海終了から、締め切りまで一週間しかないとか。
 良い修羅場でした(いや、よくないけど。
 とりあえず、サンクリの東方本サンプルをUPしましたので、
 よろしければどうぞ → 


 それはさておき、幻想の樹海のコト。
続きを読む ≫
 
 

 相変わらず、まったりとしつつ良い感じのイベントでしたが、
 さすがに、いくらSQノリとはいえ、カタログはやりすぎだったと思いましたw
 せめて、島名くらいは……w
 次があるなら、白紙のMAPページに島名だけとかありそうで、こわいw


 お隣その1 InspirationFloorさん
 ふと見た時に、描いておられた、色紙のブシ子に惚れました。
 さらには、指でこするという独特の手法に、ウチの絵描きが惚れてました。
 それにしても、シリカさんて、肌が褐色だから白が映えますね。
 えろさが増して見えるような気がします……っていうか、えろかったですw
 え? 白って何って……
 そりゃあ、のたりじゃ、掛けれないもとい書けないアレですよ。


 お隣その2 GOTTA2さん
 お隣という特等席で、面白いものをいっぱい見せてもらいましたw
 ありがとうございます。
 そして、呼び込みとトークのセンスにちょっと惚れましたw
 買わせてもらったものは、サークルメンバーが集まった時にでも、
 楽しませてもらおうと思います。


 後ろ斜向い 遥夢社さん
 新刊ありがとうございました。
 積極的なマグ子さんえろカワユス。
 ラブラブな二人が、あんな極限状態になったら
 あんなコトしちゃうのも仕方ないw


 三サークルさんともお世話になりました。
 また、機会がありましたら、よろしくおねがいします。


 CATARACTの次回の参加イベントは、
 上記、した通り、サンクリ41です。どうぞよろしくー。
 

 では、改めて。
 みなさん、ありがとうございました&おつかれさまでした!
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| kitano | 13:14 | comments (0) | 雑記::北乃ゆうひ |

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