2006,05,03, Wednesday
2006,05,03, Wednesday
フランドール 北乃ゆうひ
フランが青空の下で走り回るのを幻視したのでこんな話……の続き。
でもまだ終わらずに続きます。
完結したら一話にまとめて読みやすくする予定です
フランが青空の下で走り回るのを幻視したのでこんな話……の続き。
でもまだ終わらずに続きます。
完結したら一話にまとめて読みやすくする予定です
「ふぅ」
夕食が終わり、それぞれが自分の時間のために食堂から出て行った後、まだ食堂に残っていたレミリア・スカーレットは物憂げでいて寂しげな嘆息を漏らした。
「どうかなさったんですかお嬢様?」
「ちょっと……ね」
テーブルの上を片付けていた咲夜が主人のその嘆息に気が付き問い掛けてくる。レミリアはそれに少し微妙な表情で苦笑を浮かべるだけで答えない。
だが、
「フランドール様のことですか? 先ほどの夕食の際にはとても楽しそうに今日の出来事を語っていらっしゃいましたが」
どうやらこのメイドは嘆息の原因を分かっていたらしい。
「――ええ」
見透かされていた事が不満なのかはたまた別の理由なのか、とにかくレミリアはもう一度嘆息をしてから素直にうなずいた。
「私も見た事がない――とても楽しそうな顔をしていたから……嬉しい反面複雑なのよ」
「お嬢様は……妹様が人間のご友人をおつくりになるのを快く思われていないのですか?」
「いいえ」
レミリアはゆっくりと首を左右に振り、両手で頬杖をし嘆息混じりに答える。
「むしろ賛成よ。私にとってパチェがいるように、フランも――妖怪とか人間とか関係なく――親友と呼べる存在を得る事に反対するつもりはないし、むしろ作って欲しいとも思うわ。でもね――」
皮肉げに口の端を吊り上げ、レミリアは続けた。
「その友人とやらにフランを奪われてしまうようで腹立たしいのよ」
最後に私ってば我侭よね、とつぶやくレミリアに咲夜は微笑む。
「ご自覚されてらしたんですね」
「咲夜。どことは言わないけどゼロよりも小さくヘコますわよ」
「食後のハイビスカスティーはどうですか?」
「誤魔化さないの……でも、頂くわ」
☆
「読み書きの勉強?」
「ああ」
フランドールの言葉に、竹光は両手を腰に当てたまま大きく首を縦に振った。
「今日は週に一回、読み書きを教えてくれる先生が来る日でな。オレッチ達子供はみんな読み書きを教えてもらうんだ。
ンなワケだから、それが終わるまでは今日は遊べねーのよ」
「そっか……それなら仕方ないよね……」
残念そうに俯くフランドールに、竹光はニカっと笑いポンと一つ手を打つと、彼女の手を取った。
「なに?」
「オメーもオレッチ達と一緒に勉強を教えてもらえばいーんだよ。そうすりゃあ一緒にいられるだろ?」
グイっとフランドールを引っ張って駆け出しながら竹光が告げる。
「で、でもいいの?」
とととっと、数度たたらを踏んでから体制を立て直し、竹光の駆け足の調子に合わせながらフランドールは訊く。
「イイもワルいもオレッチが訊いてやるよ――と、なれば善は急げだ!」
「急ぐ前から急いでるじゃない!?」
そんなフランドールの言葉は聴いているのかいないのか、フランドールを連れて竹光は村を駆け抜けた。
そんな経緯もあって、フランドールは村の子供達と共に白石沢慧音先生の習字教室に参加した。
フランドールの姿を見た慧音は一瞬驚いた表情を浮かべたものの、村の子供達と普通に接しているのを見、とりあえずは彼女を加えてのいつも通りの授業をするのだった。
「――では、今日はここまでだ。はしゃぎ回るのは結構だが、最近この近辺に人を襲う妖怪が出没すると聞く。みな、あまり遠くまで行かず遅くならないようにな」
授業に参加した子供達はそれぞれ返事をし、ぞろぞろと教室代わりに使っている村長の家の一室を出て行く。フランドールもそれに倣い部屋を出ようとして、引き返した。
「どうした?」
それに気が付いた慧音が彼女に声をかける。
「えーっと――この近辺に出る危険な妖怪って……私の――私たちのこと?」
問いに慧音は静かに首を振った。
「いや――最近出没と言っただろう?
お前達のことならそんな風にはいわないし、何より紅魔館の住人は滅多に人里には出てこないだろう?」
「咲夜は買出しに出かけるよ?」
「ふむ。だが彼女は異端ではあるが妖怪ではあるまい」
「そーだね」
ふむふむとうなずいてから、フランドールはアレ? と可愛らしく首を傾げる。
「――と、いうことは私たちじゃない新しい妖怪? 引っ越してきたのかな?」
「そうだろうな。何らかの理由で自分の縄張りをおわれたか――あるいは、元々流浪の妖怪なのかはわからんが、な」
「ふーん……」
うなずく慧音に、フランドールは眼を紅く輝かせ口の端を吊り上げながらクスリと笑った。
「どっちにしろ――命知らずだよね、その妖怪」
その表情に一抹の不安を覚えた慧音は、授業前から思っていた疑問を口にした。
「ところでお前は何で子供達に紛れている? 何が目的だ?」
「目的……って……」
どこか厳しい口調と問い詰めるような気迫にフランドールはやや引き、怯えたような顔をする。
「べ、別に変なコトはしないよ……」
「だがお前は――」
慧音が何かを言おうとした時、
「おーいフラ~ン! 何やってんだ~? とっとと行こうぜぇ~っ!」
竹光の声がそれを遮った。
フランはパタパタと入り口まで駆け、
「ちょっと待ってて! すぐ行くから」
戸から顔をだけ出して、そう答えると慧音へと向き直った。
「私はただ友達が欲しかっただけだもん!」
そしてそれだけ言い放つと、部屋から飛び出し子供達の輪の中へと入っていく。
「ふむ」
その背中を見ながら、慧音は少しだけ反省する。
「ただ友達が欲しいだけ……か」
なぜ子供に紛れているか訊いたときのフランドールの表情は――
「怖がらせてしまったか。目に涙を浮かべていたように見えたが……悪気はな――いワケではななかった、な。
何か裏があるのではと決め付けてしまっていた。悪いことをしたな」
嘆息交じりに独りごちて、それでも念の為にと自分に言い聞かせるように、慧音はフランドールの様子をしばらく見ることにした。
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夕食が終わり、それぞれが自分の時間のために食堂から出て行った後、まだ食堂に残っていたレミリア・スカーレットは物憂げでいて寂しげな嘆息を漏らした。
「どうかなさったんですかお嬢様?」
「ちょっと……ね」
テーブルの上を片付けていた咲夜が主人のその嘆息に気が付き問い掛けてくる。レミリアはそれに少し微妙な表情で苦笑を浮かべるだけで答えない。
だが、
「フランドール様のことですか? 先ほどの夕食の際にはとても楽しそうに今日の出来事を語っていらっしゃいましたが」
どうやらこのメイドは嘆息の原因を分かっていたらしい。
「――ええ」
見透かされていた事が不満なのかはたまた別の理由なのか、とにかくレミリアはもう一度嘆息をしてから素直にうなずいた。
「私も見た事がない――とても楽しそうな顔をしていたから……嬉しい反面複雑なのよ」
「お嬢様は……妹様が人間のご友人をおつくりになるのを快く思われていないのですか?」
「いいえ」
レミリアはゆっくりと首を左右に振り、両手で頬杖をし嘆息混じりに答える。
「むしろ賛成よ。私にとってパチェがいるように、フランも――妖怪とか人間とか関係なく――親友と呼べる存在を得る事に反対するつもりはないし、むしろ作って欲しいとも思うわ。でもね――」
皮肉げに口の端を吊り上げ、レミリアは続けた。
「その友人とやらにフランを奪われてしまうようで腹立たしいのよ」
最後に私ってば我侭よね、とつぶやくレミリアに咲夜は微笑む。
「ご自覚されてらしたんですね」
「咲夜。どことは言わないけどゼロよりも小さくヘコますわよ」
「食後のハイビスカスティーはどうですか?」
「誤魔化さないの……でも、頂くわ」
☆
「読み書きの勉強?」
「ああ」
フランドールの言葉に、竹光は両手を腰に当てたまま大きく首を縦に振った。
「今日は週に一回、読み書きを教えてくれる先生が来る日でな。オレッチ達子供はみんな読み書きを教えてもらうんだ。
ンなワケだから、それが終わるまでは今日は遊べねーのよ」
「そっか……それなら仕方ないよね……」
残念そうに俯くフランドールに、竹光はニカっと笑いポンと一つ手を打つと、彼女の手を取った。
「なに?」
「オメーもオレッチ達と一緒に勉強を教えてもらえばいーんだよ。そうすりゃあ一緒にいられるだろ?」
グイっとフランドールを引っ張って駆け出しながら竹光が告げる。
「で、でもいいの?」
とととっと、数度たたらを踏んでから体制を立て直し、竹光の駆け足の調子に合わせながらフランドールは訊く。
「イイもワルいもオレッチが訊いてやるよ――と、なれば善は急げだ!」
「急ぐ前から急いでるじゃない!?」
そんなフランドールの言葉は聴いているのかいないのか、フランドールを連れて竹光は村を駆け抜けた。
そんな経緯もあって、フランドールは村の子供達と共に白石沢慧音先生の習字教室に参加した。
フランドールの姿を見た慧音は一瞬驚いた表情を浮かべたものの、村の子供達と普通に接しているのを見、とりあえずは彼女を加えてのいつも通りの授業をするのだった。
「――では、今日はここまでだ。はしゃぎ回るのは結構だが、最近この近辺に人を襲う妖怪が出没すると聞く。みな、あまり遠くまで行かず遅くならないようにな」
授業に参加した子供達はそれぞれ返事をし、ぞろぞろと教室代わりに使っている村長の家の一室を出て行く。フランドールもそれに倣い部屋を出ようとして、引き返した。
「どうした?」
それに気が付いた慧音が彼女に声をかける。
「えーっと――この近辺に出る危険な妖怪って……私の――私たちのこと?」
問いに慧音は静かに首を振った。
「いや――最近出没と言っただろう?
お前達のことならそんな風にはいわないし、何より紅魔館の住人は滅多に人里には出てこないだろう?」
「咲夜は買出しに出かけるよ?」
「ふむ。だが彼女は異端ではあるが妖怪ではあるまい」
「そーだね」
ふむふむとうなずいてから、フランドールはアレ? と可愛らしく首を傾げる。
「――と、いうことは私たちじゃない新しい妖怪? 引っ越してきたのかな?」
「そうだろうな。何らかの理由で自分の縄張りをおわれたか――あるいは、元々流浪の妖怪なのかはわからんが、な」
「ふーん……」
うなずく慧音に、フランドールは眼を紅く輝かせ口の端を吊り上げながらクスリと笑った。
「どっちにしろ――命知らずだよね、その妖怪」
その表情に一抹の不安を覚えた慧音は、授業前から思っていた疑問を口にした。
「ところでお前は何で子供達に紛れている? 何が目的だ?」
「目的……って……」
どこか厳しい口調と問い詰めるような気迫にフランドールはやや引き、怯えたような顔をする。
「べ、別に変なコトはしないよ……」
「だがお前は――」
慧音が何かを言おうとした時、
「おーいフラ~ン! 何やってんだ~? とっとと行こうぜぇ~っ!」
竹光の声がそれを遮った。
フランはパタパタと入り口まで駆け、
「ちょっと待ってて! すぐ行くから」
戸から顔をだけ出して、そう答えると慧音へと向き直った。
「私はただ友達が欲しかっただけだもん!」
そしてそれだけ言い放つと、部屋から飛び出し子供達の輪の中へと入っていく。
「ふむ」
その背中を見ながら、慧音は少しだけ反省する。
「ただ友達が欲しいだけ……か」
なぜ子供に紛れているか訊いたときのフランドールの表情は――
「怖がらせてしまったか。目に涙を浮かべていたように見えたが……悪気はな――いワケではななかった、な。
何か裏があるのではと決め付けてしまっていた。悪いことをしたな」
嘆息交じりに独りごちて、それでも念の為にと自分に言い聞かせるように、慧音はフランドールの様子をしばらく見ることにした。
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